クラブ試打 三者三様

ピン i230 アイアンを西川みさとが試打「HS遅めには難しい顔」

2023/05/09 07:00

数々の勝利に貢献した名器の後継 HS30m/s台の女子プロ評価は!?

渋野日向子のメジャー制覇をはじめ、世界各国で70勝以上を積み重ねた名器「i210 アイアン」(ピン)の後継モデル「i230 アイアン」。発売から3カ月が経過し、スムーズにスイッチしたツアープロの様子と、各メディアで称賛する声の多さで、性能の高さを確信しているゴルファーは多いだろう。そんな正統進化を遂げたモデルは、アマチュアゴルファーにとって本当に“買い”か!? ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。まずはHS40m/s未満の女子プロ・西川みさとが試打評価を行った。

「スッキリ小ぶりのシルエット 嫌いではないけれど…」

理想的な高さだが ややつかまり気味で左寄りの弾道が多かった

―率直な印象は?
「ヘッドが小さいのは好きなので、とても好印象なのですが、私が使用するには少しハードかなという印象を持ちました。前作『i210』を使っていた人には問題なく移行できると思うのですが、私が選ぶとなると少しハードルは高い気がします。実際の振り心地や弾道ではそれほど難しい感じはないのですが、見た目から来る印象が大きく影響している気がします」

キャッチコピーは『勝利に導かれたアイアン』

―見た目でシビアに感じる?
「すごくスッキリしていて、小ぶりなサイズ感は好きな形状です。ただ、もう少し全体的なやさしさを感じさせてくれる丸みを帯びていてほしかったというのが本音です。全体的に角張ったシルエットが、やさしさというより、格好良さを優先しているようで、少し扱いにくく感じてしまう部分が見受けられます。嫌いではないのですが、実際に自分が選ぶとなると難しいと感じてしまうのは否めません」

トップブレードは薄めで上からのシルエットはかなりシャープ

―同社の「i525 アイアン」のほうが好み?
「そうですね、実際に購入もしましたので(笑)。“飛び系”と呼ぶほど、実際にはそれほど飛びすぎる心配もなく、私にはジャストと思えるモデルでした。また、エースアイアンとして、2018年発売の本間ゴルフ『ツアーワールド TW747 P アイアン』を使用していますが、見た目のやさしさと楽に飛んでくれる要素がある点で、4年以上も使用していますが、いまだに手放せません。『i230』もやさしさが全くないわけではないのですが、それらと比較するとやや難しく感じる印象。飛距離もできればもう少し(7Iで平均134.9yd)飛んでほしいところです」

ソールのトウ側に高比重ウエートを搭載して寛容性がアップ

―打感の感想は?
「インパクト時にカチンッという硬さを感じるフィーリングは一切なく、“飛び系”という概念がなかった頃の、以前のアイアンのそれといった感触です。硬くもなく、軟らかくもなく、本当に理想的。飛びすぎず、程よい弾き感は、今使っている『TW747 P』に近いともいえます。イメージ通りに打ち出しのスピード感と高さが出せるアイアンとして、とても好感触です」

各溝の角度と間隔を最適化して前作より溝(スコアライン)の本数を増やした

―気になるデメリットは?
「アドレスに入って上から見た印象で、結構ネック周りがシャープにスッキリ見え、なんとなく実際のコースでボールを打つとなると、心配になってしまうところがあります。それほど難しい性能ではないのですが、打つ前に余計な力みが入ってしまいそう…。ボールはちゃんと上がってくれるの? というプレッシャーを勝手に感じてしまいそうなシルエット。アイアンを選ぶ基準として、最低限は上がってくれるイメージが抱けるかどうかを大事にしているので、『i230』はその点で私にはマイナスに感じてしまったのかもしれません」

「私のHSだとロングアイアンの飛距離が不十分になるかも…」と西川

―どのような人向き?
「しっかり振り切れる人。非力な女性よりは、パワーのある男性ゴルファー向き。今回の試打は7番アイアンで行いましたが、これで6番や5番のロングアイアンになってくると、より重圧を感じる気がします。ツアーでは、使用している女子プロも多いですが、最低でも一般的な男性のHS(1Wで40m/s前後)はある選手たちなので、クラブの力を借りて飛距離を伸ばす人には、やや不安要素が残るモデルかな…。セットで購入を考えるなら、しっかりスイングが完成された中上級者の方になるでしょうか」

欲を言えばもう一段階やさしさUP希望【総合評価3.9点】

【飛距離】3.5
【打 感】4.0
【寛容性】4.0
【操作性】4.0
【構えやすさ】4.0

・ロフト角:33度(7I)
・使用シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー105(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

■ 西川みさと プロフィール

1977年7月10日生まれ、埼玉県出身。専大時代の1998年に「日本女子学生選手権」で優勝。大山志保古閑美保らとともにナショナルチームで海外大会に出場した。2002年のプロテスト合格後は、飛距離こそ出ないものの、ショートウッドを巧みに使う技巧派として、美しいスイングを武器にレギュラーツアーで人気を集めた。