ブループリント S アイアンを筒康博が試打「もはや難しいアイアンではない」
新展開の“青写真”アイアン ご意見番クラブフィッターの評価は!?
青写真(BLUEPRINT)を具現化したモデルとして、2019年にピンから初登場した軟鉄鍛造マッスルバックアイアン「ブループリント」。ことし発売された2代目は、操作性と寛容性を兼ね備えた“SCORE”=「S」と、操作性と打感にこだわる上級者向け“TOUR”=「T」の2モデル体制で展開された。新たな舵を切った人気ブランドを、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。セミキャビティ構造「ブループリント S アイアン」を、ご意見番クラブフィッター・筒康博が試打評価を行った。
「競技ゴルファーが望む要素を詰め込んだスコア重視向けアイアン」
―率直な印象は?
「前作はフェース長、全体サイズがとても小さかったので、シビアな点は否めませんでしたが、今作はそこまで小さくなく、寛容性が加えられています。前作の打感のやわらかさや幅狭ソールの抜けの良さがブラッシュアップされながら、いまだにプロに愛されている名器『i210 アイアン』の要素であるミスへの強さもある。コンパクトでやさしくて、ボールをしっかりとらえた分だけ飛ばすことが可能。イマドキの競技ゴルファーが良しとする要素が全て入ったアイアンだと思いました」
―競技ゴルファーが全て良し…?
「はい。もちろん今も昔も競技ゴルファーは、操作性も打感も抜けの良さも全てアイアン選びの要素に挙げますが、今はそこに寛容性をプラスαで求め出しています。今作『―S』は、フィーリングがしっかり味わえるのに、フェース上下の打点ミスに非常に強くなっている。競技ゴルファーがアイアンに求める要望は年々多岐にわたっていますが、今作は現在考えられる要素をほぼ全て押さえたといえるのではないでしょうか」
―兄弟モデル「ブループリント T アイアン」と比べると?
「『―T』は、前作の小型マッスルバックの特徴を継承しつつ、わずかに寛容性を足したモデルに仕上がっています。同社の歴代モデルとは少し系譜の違うプロモデル路線の同シリーズですが、今作はその直属の後継といえる『―T』ですらやさしさを感じられる。『―S』と比べると確かにフェース長が短いぶん使い手は限られますが、アイアンに絶対的な飛距離を求めない限り、『―T』という選択肢もアリでしょう。どんな悪いライからでも抜けるソール形状は、『―S』にはない『―T』ならではの武器といえます」
―名器「i210」の後継「i230 アイアン」との違いは?
「『i230』は今作と比べると、ちょっと打感が硬いというか、打音が少しだけソリッドに感じます。今作は比較的にやわらかさがあり、球持ち感が心地いい。キャビティ部が薄い割には、絶妙な高さと厚みに設計してあり、ボールの当たりも弱く感じない。同社ドライバーに例えると、『G425』がどんなゴルファーにも受け入れられ、新作『G430』で打音とフィーリングが向上。それとアイアンも同様に、『i210』が多くの人に受け入れられ、『i230』ももちろん向上していますが、今作はさらにシュッとコンパクトにし、打感と操作性が追加されました。結果的に見た目も性能もフィーリングも、全てを取りそろえた欲張りなモデルになっています」
―他社でいうと類似モデルは?
「タイトリスト『T100 アイアン』『T150 アイアン』、ダンロップ『スリクソン ZX7 Mk II アイアン』、ミズノ『ミズノプロ 243 アイアン』といったところ。ライバルの多いカテゴリーなので、あとは形状の好き嫌いと同シリーズのドライバーとの兼ね合いで決めるべきでしょう。ただひとつ明確に言えることは、『ブループリント』=難しいアイアンではなくなったこと。ドライバーの平均HS40m/sの私でも、『―T』の7番で160yd飛んだ今回の結果こそ、その証明になったのではないでしょうか」
―どのような人向き?
「ドライバーのHSが41m/s以上で、他人と飛距離を競い合うことをしないゴルファー向き。アイアンの距離で勝った負けたとこだわらない人なら、最低限の飛距離は出せるので(7番で平均156.1yd)安心して購入してよいと思います。長い距離を競うロングゲームよりもショートゲームの精度を重視したスコア重視プレーヤーが使うべきでしょう」
西川評(3.8点)から一転 全項目4.5以上のハイスコア【総合評価4.7点】
【飛距離】4.5
【打 感】4.5
【寛容性】4.5
【操作性】5.0
【構えやすさ】5.0
・ロフト角:33度(7I)
・使用シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー105(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。