「ドライバーのロフト」立ち気味傾向は続くのか?/女子プロクラブ考VOL.1
昨年の秋口に大々的な女子プロのクラブ調査を行ったが、彼女たちがどんなクラブを使い、どんなスペックで戦っているのかは、ほぼ同じヘッドスピード(以下HS)の我々のクラブ選びに大いに参考になるだろう。膨大なデータを元に、女子プロのクラブの傾向をギアマニアが分析・検証していく。1回目はドライバーのロフトについて。
ドライバーのロフト「女子プロのやや立ち気味傾向」は変わらず
調査した40人中、ロフト角9.5度以下は28名で、9.5度が7名、9度が16名、8.5度が5名と、ロフトは“立ち気味傾向”だった。男子プロは今平周吾(10.5度)や平田憲聖(10.5度)のようにロフトの多いヘッドを使う傾向があり、(男子に比べて)HSが遅い国内女子ツアーの選手の方が、ロフト角が少ない結果になった。「HSが速い(男子)からロフトが少ない、遅い(女子)からロフトが多い」とは限らないわけだ。
ここにはスイング軌道の差がある。トラックマンなどの弾道測定器が普及して明らかになったが、男子プロはドライバーでもレベルからダウンブロー軌道で打つ選手がほとんど。インパクトをハンドファーストで迎えるため、ロフトの多いヘッドをロフトを減らしながら打っている。インパクト効率はやや悪くなるが、HSの速い男子プロは、これで安定感を得ているわけだ。
一方で女子プロは、アッパー軌道でインパクトを迎える選手がほとんど。ロフトの少ないヘッドをアッパーに当てることで、ボールとヘッドを正面衝突に近づけ、インパクト効率を上げて飛ばしているのだ。ただし、これにはリスクもあって、アッパー軌道は左へのミスも生みやすく、さらに極端に低スピンになると球筋は不安定になりやすい(適度にバックスピン量があったほうがスピン軸が安定して球も安定しやすい)。彼女たちの高い技術による裏付けがあるから可能だともいえるだろう。
ロフトを少なくするなら「つかまりのいいヘッド」をチョイス
彼女たちのロフト角が少ないからと言って、手放しで真似をするのは危険だ。前述したように高い技術が必要なのはもちろんだが、ヘッドの特性を十分に考慮する必要があるからだ。
例えば穴井詩はキャロウェイ 「エピックフラッシュ サブゼロ ダブルダイヤモンド」の8.5度を使用しているが、同ヘッドは低スピンでつかまりも抑えられたモデル。穴井のようにボールをつかまえて高さを出せるパワーと技術があるなら使いこなせるが、我々一般男性アマチュアのHSだと、ロフト角が少ないとボールが上がらない上に、つかまりも良くないので、飛距離に直結しないばかりか力が入ってミスも誘発するだろう。
ロフト角が少ないと効率が良いインパクトを迎えやすいことは確かだが、やはり体を鍛えたり、アッパーで当てられるようなスイングの技術を向上するなどのプラスアルファのスキルが必要になってくる。
ロフト8.5度のドライバーを使用している選手は穴井の他にもいたが、4人とも同じスリクソンで、櫻井心那は「ZX5 Mk II LS」、山下美夢有は「ZX5 Mk II」とダンロップのツアーモデル。ダンロップのドライバーの共通点はツアーモデルでもボールのつかまりがよく、そのためロフト角が立っていてもボールがつかまらないということが起こりにくい。ロフトが立ったドライバーで飛ばしたいと考えるなら、こうしたつかまりのいいヘッドを探してみるのもひとつの手だろう。
ロフト10度以上に共通するのは「低スピンヘッド」
ロフト角10度以上のドライバーを使う残りの13人に共通するのは、低スピンのドライバーを使用しているということ。つまり彼女たちは、低スピンのヘッドを使いつつも、ロフト角を増やすことで”低スピン過ぎ”を防いでボールのつかまりをよくしているのだ。
ピン「G430 LST」を使用する渋野日向子、鈴木愛、セキ・ユウティンは、ロフト10.5度。テーラーメイド「ステルス2」を使う山内日菜子、「ステルス2プラス」を使う稲見萌寧もロフト10.5度を選んでいる(稲見は昨秋時点。現在はQi10 LS の10.5度を使用)。こうした低スピンヘッドを使いたいと思っているアマチュアの方は、やはりロフトは多目なほうが、ヘッドの特性を生かして飛距離アップにつなげられるだろう。
今や、彼女たちのほとんどが個人で弾道測定器を所有し、データを計測し、スイング作りやクラブ選びに反映している。さらに、ほとんどの選手のクラブには可変スリーブが装着されているドライバーを使用しているため、コースやコンディションによってロフト角を調整しているのも事実。
自分は「ロフト角何度がベスト」と決めつけずに、測定器などでデータを測り、自分のスイング軌道や入射角などをよく見て、最終的にロフト角を決めることをオススメしたい。その際に、女子プロの使用ヘッドとロフトの関係性を見るのはとても参考になるだろう。(文・田島基晴)
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