この手があったか! 夏ラフ対策はヘッド操作主義 藤井美羽
「3年前とまるで真逆の動き」ジャスティン・ローズ スイング解説by目澤秀憲
昨年「AT&Tペブルビーチプロアマ」で実に4年ぶりの優勝を遂げたジャスティン・ローズ(イングランド)。ことしの「全英オープン」では優勝争いを演じ、44歳になった今も健在ぶりをアピールしている。現地でそのスイングや普段の取り組みを見てきた目澤秀憲コーチ(桂川有人、永峰咲希らを指導)に、ローズの強さの秘密を聞いた。
クラブ軌道がフラットに 右サイドに“フトコロ”ができた
7月「スコットランドオープン」の練習日、降りしきる雨の中、桂川有人選手のすぐ横でジャスティン・ローズが黙々と球を打っていたのを今でも覚えています。雨風が強くてとても練習には向かない状況でしたが、そんなコンディションを気にとめる様子もなく、取り組んでいる課題に向き合って練習していた。ローズが昨年から師事しているマーク・ブラックバーンコーチがそばにいて、球を打ってはトラックマンの数値を見ながら会話をし、修正を繰り返していました。
なぜその2人のやり取りが印象に残っているかというと、ローズのスイングが昔と比べてだいぶ変わっていたからです。今から3年前の2021年にPGAツアーの現場で見たときは、スイング中に手が体の前にいる時間が長く、クラブが立って入りやすくて上から打ち込むようなスイングでした。それだと球が上がりにくいので、時に右に倒れ込みながらインパクトをして、なんとか帳尻を合わせるようにしていました。プレッシャーがかかった時にその悪い癖が顕著に現れ、優勝争いの場面で右への弱い球が出てスコアを落としていたのを記憶しています。
それが今回は、まるで真逆のスイングをしていました。テークバックではしっかりと右サイドに体重を乗せてトップを深く入れる。手が深く入ったポジションから、ダウンスイングでは左手の掌屈(手首を手のひら側に折る動き)を入れながらクラブを低く下ろしてくる。そこから右に倒れ込まないようにと、右肩が高いままヘッドを出していくような動きをしていました。
練習では時おりクロスハンドでも球を打っていました。クロスハンドにすると右サイドを高く保てるので、右に倒れ込まずに打てるからです。その状態でインパクトでフェースが左を向くような練習をしていました。その結果、手が体の前にいる時間が短くなり、クラブ軌道はだいぶフラットになって、右サイドにフトコロができるようになっていました。
全英オープンの最終日、“ポステージスタンプ”と呼ばれる8番のショートホールで、ティショットをピンの近くに寄せて獲ったバーディを覚えている方も多いと思います。左からの風で、今までの悪い癖が出ると大きなミスになりかねない状況でしたが、しっかりと新しいスイングをやり切りました。最終的に優勝はできなかったものの、本人も取り組んでいるスイングの手ごたえを感じたのではないでしょうか。
44歳は今週の「フェデックスセントジュード選手権」に出ているトップ70の最年長(アダム・スコットも44歳)。40歳を過ぎてからあれだけ現代的なスイングに取り組むというローズの姿勢、そしてそれを試合でやり切る芯の強さには、本当に頭が下がるばかりです。(取材・構成/服部謙二郎)
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