祝!全英制覇 2カ月でメジャー2勝を勝ち取ったメンタリティー/ザンダー・シャウフェレ特別コラム
■デサントとともに今季メジャー2勝
日本の皆さんこんにちは。ザンダー・シャウフェレ(Xander Schauffele)です。
「全英オープン」で優勝することができました。
5月「全米プロゴルフ選手権」から2カ月後に再び訪れた歓喜の時間。1年のうちに、この手にメジャータイトルを2つ得られるなんて夢のような気分です。
1勝目を手にするまで“永遠”にも感じられるような時間を過ごしてきました。2勝目はまた特別な感情がわいて仕方ありません。今回の勝利は紛れもなく、そのメジャー1勝目が助けになりました。ロイヤルトゥルーンのバックナインは、これまで経験してきたあらゆる試合、コースを通じて最も難しいものでしたが、プレー中は終始、気持ちは落ち着いたまま。全英のリンクスコースに求められたゴルフができたと自負できます。
気まぐれな自然条件に、独特のコースレイアウト。僕が初めてリンクスでプレーしたのは、13歳か14歳の時でした。太平洋に面したバンドンデューンズ(米オレゴン州)で、すぐに大好きになったのを覚えています。
コースとのぶつかり合いはもちろん、僕は自分や周りと競争することが生きがいで、「できない」と言われることへの挑戦をずっと楽しんできました。トゥルーンでは2位から出た最終日はもちろん、4日間を通じてミスを最小限に抑え、自分自身とボールをうまくコントロールできたはずです。気温の低いスコットランドのコースではデサントのセーターが重宝しました。暖かいのはもちろん、思い通りのスイングを可能にしてくれました。
ここでは完ぺきなドライバーショットをいつも求められるわけではありません。長いフェスキュー芝の密集地帯に入っても焦らない。それがリンクスの戦い方。とにかく、棺桶のようなポットバンカーだけを避け続ければ前進できる。うまくいかないことも受け入れながら、起こったことを一つひとつ処理していくことを大切にして戦いました。
待ちに待ったメジャー1勝目から、すぐに舞い込んできた2勝目。ここまでは長い道のりだったかもしれませんが、僕はメジャーチャンピオンになる直前も、一日の終わりには「自分は良いゴルフをしている」と言い聞かせてベッドに入っていました。思えば7年前、PGAツアーで初優勝を含む2勝を挙げた2017年も、期待を大きく膨らませながら、次の1勝までに1年以上かかったのです。
ここには世界最高の選手たちが集まっています。大会の出場選手層が充実している限り、勝つことは本当に難しい。世界トップ50、トップ100のゴルファーたちがどの試合にもメジャーのように勝利を目指してしのぎを削っているのです。
勝てない時期はフラストレーションも溜まります。でも、それこそが僕がゴルフを好きな理由でもある。「できない」に挑戦するたびに血が騒ぎ、自分の実力が見定められる。最終日最終組をはじめとした激しいデッドヒートはアドレナリンがたくさん出て、普段とは違う戦いがあります。負けたとしても、そういった瞬間を大切にすることを学び、最高のタイトルに繋げることができました。
次の勝利の瞬間も、またきっと素晴らしいものになるはずです。
ザンダー・シャウフェレ(Xander Schauffele)
1993年10月25日、米カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。サンディエゴ州立大を経て2015年にプロ転向。17年「ザ・グリーンブライアークラシック」でPGAツアー初勝利を飾ると、プレーオフ最終戦「ツアー選手権」で2勝目を挙げ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。21年「東京五輪」の男子ゴルフ競技で金メダルを獲得。24年5月「全米プロゴルフ選手権」でメジャー初優勝。7月の「全英オープン」を逆転で制してメジャー2勝目を挙げた。PGAツアー通算9勝。