次なる人気シリーズ創出へ 刷新を図る老舗シャフトメーカーのいま
分野を超えて独自技術を共有できる強み
独自という点では、カーボンと金属などの異なる素材を組み合わせる複合化技術を得意とすることも大きな強み。それは、藤倉コンポジットという社名に象徴されている。
「シャフト開発の部門だけではカーボンと金属を張り合わせるのは困難だったので、社内の他の分野の開発チームにアドバイスをもらったと聞いています。アイアン用の『MC』シリーズなど、最初に“MC”がつくモデルはその技術が使われています」
1901年の創業から現在まで受け継がれている、蓄積された技術とモノ作りへの高い意識。貞包らが自由なアイデアを出せるのは、それを実現するさまざまな技術が社内にあるからこそだろう。
「ラインアップにないもの」を求めて
最新モデル「スピーダーNX GREEN」(2022年10月6日発売)のカラーリングは、既成概念にとらわれない若きプロジェクトチームの挑戦を象徴するものだ。「自然の緑に囲まれたコースでは映えないことで、シャフトに限らず、ゴルフ用品に緑を使わないことは業界の常識だそうです」。そんな従来のイメージを一新するために、あえて他にはない緑が選ばれた。
色を決めた段階では、知る由もなかったがことがひとつ。「ファッションの世界で偶然、グリーンが今年の流行色なんです。そのおかげで女子プロが興味を持ってくれたのはラッキーでした」。もちろん、最終的に評価されるのは性能だが、入り口の部分でこれまでの常識を覆すカラーリングが功を奏している。
貞包らのチームは、すでに次の製品開発に向けても動き始めている。「求められるシャフトの傾向がいつ大きく変わるかも分かりませんし、同じようなシャフトばかりを作っていても面白くありません。現在のラインアップを見ながら、そこにないものを作っていきたいですね」。ツアー使用率ナンバー1のトップブランドだからこそ、常に変化と前進を求め続けていく。