日本シャフト特集
2021/10/18

最新ヘッドの性能を引き出す新定番「N.S.PRO 850GH neo」 標準シャフトに採用したメーカーの評価とは?

連載:ゴルフシャフトの“新定番”を生み出す熱きリレー
来春発売予定の「N.S.PRO 850GH neo」。すでにこの秋の新作アイアンに採用されている(撮影:岡崎健志)

日本シャフトは2022年春、軽量スチールシャフトの最新モデルとして「N.S.PRO 850GH neo」を発売予定だ。それに先駆け、21年秋から各クラブメーカーの最新アイアンに同シャフトが採用されている。シャフト単体での発売前に、各メーカーが採用したのはなぜか。その理由をクラブメーカーの担当者に聞くと、「N.S.PRO 850GH neo」の性能が見えてきた。

ブリヂストンゴルフの飛び系 ニューアイアン「213HF」

ブリヂストンの「213HF アイアン」に導入された理由とは?(撮影:岡崎健志)

ブリヂストンゴルフは、9月に発売したアイアンシリーズ「213HF アイアン」に「850GH neo」を採用している。

213HF アイアン」は、7番でロフト角が28度の、いわゆる“飛び系”アイアン。シリーズ最薄の肉厚(1.7/1.3ミリ)となるディンプルフェースに、下部の反発を高めるL字フェース&パワースリットを搭載。ヘッド内部には「SP-COR」という突起をつけることで高初速エリアを広げている。

飛び系アイアンは、飛距離性能の高さが魅力だが、その一方で「スピンがかかりにくく、グリーン上で止まらない」というデメリットが一般的だ。そんなウィークポイントをカバーするため、「213HF」は開発段階から「どのシャフトを採用するか?」が一つのテーマになっていたという。

HS40m/sのゴルファーに合うシャフトの重量は?

ヘッドスピードが40m/s前後のゴルファー向けのシャフトを探していたと話すブリヂストンの坂(撮影:岡崎健志)

ブリヂストンゴルフのボール・クラブ事業本部の坂航(敬称略、以下同)はこう語る。

「ストロングロフト化するなど反発性能を高めたヘッドは、打ち出し角を確保しづらくなります。日本シャフトのスチールシャフトだと『N.S.PRO 950GH neo』は、中間から先端部がシャープに動いて打ち出しを上げ、スピンも入るので、私たちの課題は払拭(ふっしょく)できると考えていました」

しかし、「950GH neo」の採用では懸念が残ったそうだ。「シャフトとヘッドの性能のマッチングは間違いありません。ただ、『213HF』の想定ターゲットは、ドライバーのヘッドスピードが40m/s前後のゴルファーです。この層に、90g台のスチールシャフトでは『少し重いのでは?』という声があったんです」(坂)

40m/s程度のヘッドスピードを持つアマチュアゴルファーの参考になるのが女子プロゴルファーのスペックだ。国内女子ツアーの選手を見渡すと、この10年は日本シャフトの「N.S.PRO 850GH」が圧倒的な使用率を誇っている。これほど確かな事実があることを踏まえると、やはり純正シャフトを90g台にすることへの懸念は払しょくできない。

“上げる”、“止める”がしやすくなる「850GH neo」

ブリヂストンからのフィードバックも受け最終的な性能を決めたと話す栗原(撮影:岡崎健志)

そんな時、日本シャフトのマーケティング担当・栗原一郎から坂へ連絡が入った。
「開発最終段階の『N.S.PRO 850GH neo』を試打してほしいという内容でした。本当に絶妙のタイミングでしたね(笑)」(坂)

栗原が用意したプロトモデルは2タイプ。「試打していただいたのは、『ZELOS』と前作『850GH』の中間的な挙動でゆったり動くモデル。もうひとつは、『950GH neo』のシャープな動きを踏襲しながら軽量化したモデルです」(栗原)

両シャフトを実際に試した坂が印象に残ったのは、後者のモデルだった。
「打ち出しが確保されるし、ボールの直進性も高い。フェアウェイから打っても、しっかり球が上がりました。このシャフトなら、ヘッドスピード40m/s前後のゴルファーでも軽快に振り切れるし、『213HF』の飛距離性能を引き出してくれると確信しました」(坂)

『850GH neo』の商品化で日本シャフトとしても最終的に決断したのは、「950GH neo」のシャープな動きを踏襲したモデル。つまり坂の心に響いたタイプだ。これにより、ブリヂストンゴルフのニューアイアン「213HF」の純正シャフトにも晴れて「850GH neo」の採用が決定。高い飛距離性能にプラスし、球が上がる性能を兼ね備えたアイアンが完成した。

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