「PLD」新3モデル試打 “浅溝ミーリング”の効果とは /オグさんのパター偏愛日記#5
オグさんです。今回は、PINGの「PLD」シリーズに2025年追加された3モデルに、独断と偏見で迫ってみたいと思います。
PLDシリーズは、アリゾナ州にあるPING本社内に置かれたパター研究開発室「パッティングラボ」にて培った研究結果やデータによって設計されています。1mmの狂いもない完全フラットなパターレーンを設置し、ツアープロのストロークや転がりを分析。プロの求めるフィーリングや転がりなど、様々な項目のデータを収集しています。
今回追加されたのは3モデルで、すべてブレード型。新たな仕上げやミーリングという共通の特徴を持ちますが、それぞれ異なる特性を持っています。新たなミーリングとは「シャローAMP溝」。従来のPLDシリーズには「ディープAMP溝」が設定されており、シャローAMP溝は、ディープAMP溝に比べ、ミーリングが浅くなっています。この彫りの深さは、打感に直結します。彫りが深いほどインパクト時にボールとの接点が小さくなり、使い手は打感をソフトに感じやすくなります。
シャローAMP溝が生まれた経緯は、ツアープロを始めとしたゴルファーからのフィードバックや、インパクト時の転がりのデータ解析などから、ミーリングのバリエーションを増やした方が良いと判断したのでしょう。
シャローAMP溝とディープAMP溝を打ち比べてみると、前者の方がソリッドでボールを弾いてくれるような印象があります。できるだけ同じ距離感で打ってみると、転がりの距離差はほとんどありませんが、感触と、わずかですが音に違いが認められます。人によってこの辺の感じ方は変わってくると思いますが、個人的には新しいシャローAMP溝の方が、感触と音に対して転がるスピードや転がる距離がリンクしているように感じました。
それでは各モデルを詳しく見つつ、私の打った感想を率直にお伝えしていきます。
■KUSHIN
懐かしいモデルが最新テクノロジーで復活
「KUSHIN(クッシン)」は、PINGパターの中で歴史あるモデルのひとつで、初代は1960年代に登場しました。時代の技術や流行に合わせたリニューアルが何度か施されていますが、初代のKUSHINは、ネックなしのベントネックに、一般的なブレードタイプと比べてわずかに幅広いボディが組み合わされていました。最新のPLD ミルド KUSHIN(クッシン)パターは、トウハング(パターを水平に置いた時のフェースの傾き度合い。大きいほどヘッドが開閉しやすい)は違えども、オリジナルの特徴を色濃く反映した仕上がりです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → センター軸
ボール位置センター or 左寄り → 左寄り
ネックがないベントネックを採用しており、シャフトの軸線とフェースがそろうハーフオフセット。フェースバランス設定のためストローク中のヘッドが開閉しようとする力は強くありません。振り子のように線対称のストロークで打ちやすいセンター軸とマッチしやすいです。ハーフオフセットのため、ボール位置はセンター、左寄りどちらでも問題ないですが、どちらかといえば左寄りの方がマッチします。
各モデルがそれぞれどういう人に合うかの目安を記しましたので、下記記事を参考にご覧ください。
<打ってみた>
ブレードっぽくもあり、マレットっぽくもある
鈍い光を放つ新しいシルバー仕上げが目に入ります。強い直射日光でもまぶしくなく、高級感があって良いですね。一般的なブレードタイプよりもわずかに幅広のボディはシンプルな形状。フランジ(ヘッド後方の出っ張った部分)のキャビティ部分には段差がなくボールとほぼ同じ幅で、フェースの向きはもちろん、ボールの転がっていく軌道もイメージしやすいです。
打ってみると、ネックがないことによる低い重心とフェースバランス設計によりフェースがねじれにくく、自分が余計なことをしなければ(パターの動きたい方向を邪魔しないようにすれば)安定したストロークができます。吊り気味に構えて振り子を意識したストロークをすると、オートマチックに再現性の高いストロークができます。打感はソリッドで、飛ばなそうなイメージもなく、クリアな打音により耳からも距離感が作りやすいです。
多くのゴルファーにマッチしやすい
私自身のスタイルを押し付けて打ってみても、問題なく使用できました。トウハングがないので、ヘッド開閉の度合いが大きいゴルファーにとってはちょっと使いづらく感じるかもしれませんが、重心がそれほど深くないので、ヘッドを自分でコントロールできます。
PLD ミルド KUSHIN(クッシン)パターは、ほとんどのゴルファーにおすすめできます。ストローク中のヘッド開閉が大きくインパクトをしっかり意識しているゴルファーにとっては、もう少しつかまりの要素が欲しくなるかもしれませんが、非常に完成度の高いモデルです。
■ANSER 30
アンサーの長所からは“ちょいズレ”モデル
PINGの「アンサー」は、現存するすべてのブレードタイプの始祖。トウヒールに配分された重量、構えやすさとカッコよさを両立する機能美あふれる形状、ボールをつかまえるクランクネックなど、後世のパターに多大なる影響を与えました。そんなアンサーの長所を持ちつつ、現代のゴルファーのニーズに合わせてチューニングを施したのがこのPLD ミルド ANSER(アンサー)30 パターです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
構えた時の形状は従来のアンサーとほぼ変わりなく、ややハンドファーストに構えやすい左軸と、ボール位置はセンターがマッチします。
<打ってみた>
ヘッドターンが穏やかで引っかけにくい
一般的なアンサーとアンサー 30の違いは、ネックの長さ。アンサー 30の方が長く、その違いは主に重心距離に表れます。アンサー 30は一般的なアンサーと比べて重心距離が短く、合わせてトウハングも小さいです。この違いはストローク中のヘッド挙動に表れ、アンサー 30の方がヘッドが自ら返ろうとする力が小さく、ストローク中のヘッドターンが穏やかになります。
ヘッドターンの度合いの違いは使用者のスタイルによって結果が変わりますが、普通のアンサーを使用しているゴルファーであれば、左へ打ち出すミスが減る傾向にあると言えます。フェースバランスのパターを使用しているゴルファーであれば、右へのミスが軽減しやすくなります。
こういった“ちょっとズレ”のパターは、より自分にフィットしたモデルを探すのに非常に有効な選択肢です。一般的なアンサーでいざという時に引っかけのミスが出る…という人なら試す価値が大いにあると思います。
■ANSER 4D
相反する要素を両立させた“わがまま”モデル
PLD ミルド ANSER(アンサー)4D パターは、アンサーにショートスラントネックを組み合わせたモデル。普通のアンサーのクランクネックと比べてトウハングが大きく、ストローク中のヘッドターンが大きいゴルファーにマッチします。トウハングの大きいパターは打点位置によって転がりを故意に変化させられるので“操作性が高い”と言われます。半面、打点がバラつく人にとっては転がりが安定させづらい、難しいパターという評価になってしまうのですが…そんなデメリットをうまく軽減しているのがこのモデルです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
フェース面がシャフト1本分後方に下がっているため、ハンドファーストに構えやすく、ボールをセンターにセットしやすいです。
<打ってみた>
右へのミスが減り打点のバラつきにも強い
ショートスラントネック搭載モデルにはハーフオフセットのものが多いのですが、本モデルはフルオフセットのため右へのミスが出にくいです。トウハングの大きいパターはヘッドの開閉が大きいため、打点ミスへの寛容性を高めようと重心を深くしすぎることがあります。そうなるとテンポの速いゴルファーは、インパクトでフェースをスクエアに戻しづらくなってしまいがちです。
ですがアンサー 4Dは操作性と寛容性のバランスが絶妙。ストロークテンポが速くてもヘッドが追従し、この形状にしてはミスへの寛容性も高いです。ヘッド開閉が大きくかつクテンポが速い方で、ミスにできるだけ強いモデルをお探しならこのモデルですね。
PLDシリーズに新たに追加された3モデルは、どれも個性的なモデルばかりでした。トウハングの大きさがきれいに分かれていて、それがストローク中のヘッドの挙動に影響します。打ち比べてみると特性の違いが感じやすかったです。機会があればぜひ打ち比べてみてください。どれが一番狙ったところに出るのか、振りやすいかなどを意識しながら試打すると、違いをより感じやすいはずです。
パターは、クラブが自分自身のスタイルにマッチするがしないかが、結果の差につながりやすいです。どんなモデルが自分にマッチするのか、じっくり探してみてください!
取材協力:AR GOLF JAPAN
写真:小林司

小倉勇人(おぐら・はやと) プロフィール
ゴルフショップ「ゴルフフィールズ ユニオン」店長。クラフトマン、クラブフィッター、さらに雑誌やウェブ記事の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。