プロにジワリ人気「ALLY BLUE ONSET」考察。ゼロトルク系に見えるけど…/オグさんのPUTTER偏愛日記#15
パター大好きな私が偏愛する(またはしそうな)パターを紹介する本連載、今回はピンの「スコッツデールTEC」シリーズの、「ALLY BLUE ONSET(アリーブルーオンセット)」です。2026年の全米オープン覇者であるウィンダム・クラークが優勝時に使用していたパターです。
視線を安定させるデザイン
白いヘッドが目を引く「スコッツデールTEC」シリーズ。この白さには、実はちゃんとした理由があります。それが、ツアープロのデータとピンの研究から生まれた「EYE-Q」テクノロジーです。白地に黒いドット、そして長いサイトラインを配することで、アドレス時に視線をスッと集中させられるよう設計されています。このEYE-Qが狙うのは、「クワイエット・アイ」と呼ばれる効果。人はアクションを起こす直前、対象をじっと見つめて視線を安定させますが、このシステムはその無意識な視線のブレを抑えてくれます。単なるデザインではなく、科学的根拠に基づいて作られているのです。
ゼロトルクや低トルクではなくフェースバランス
このパターは一見、今流行のゼロ(ないし低)トルクパターのように思われがちですが、実はフェースバランスです。一般的なパターと同様、ストローク中にフェースが開閉する力(=トルク)が発生しますが、フェースバランスのためフェース開閉の度合いは小さいです(ブレード型などは大きいものが多い)。
トルクの小さいパターに見られるオンセット、いわゆる“出っ歯”は、トルクを低減するためにヘッドの重心とシャフト軸線を揃えて作られます。しかし本モデルのオンセットはヘッド重心のすぐ前方にシャフト軸線を持ってくることで、フェースを操作しやすいメリットもあります。視覚的に集中しやすく、マレットのやさしさとブレードの操作性を併せ持っているのです。
“左目利き・ボール位置左寄り”だと使いやすさ大幅アップ
ことしの全米オープンを制したウィンダム・クラークが本モデルを使うためにピンとパターだけの契約を結んだのは記憶に新しいところ。ピン公式YouTubeによれば、クラークは左目利きでボール位置も左足寄り、ボールに引いたラインが左を向いて見えやすかったそうですが、このパターにしてから目標に真っすぐ構えやすくなり、ボールにラインを引くのを止めたのだとか。
パターはヘッドを直視している時間が長いため、形状も性能のひとつと私は考えているのですが、まさにヘッド形状とEYE-Qの効果がもたらした変化でしょう。オンセットはフェースが前方に張り出しているため、利き目の真上にボールをセットしやすい左目利きと好相性。そういった点もクラークとの相性がバッチリだったのだと思います。ちなみに、私も左目利きでボールは左足寄りです。これは…使ってみないわけにはいきません!
本モデルには通常の34インチのモデルの他に、37インチのCB(カウンターバランス)モデルがラインアップされています。クラークは最初通常モデルを試しつつCBモデルへ移行、現在はヘッドに鉛を貼って調整をしているようです(長さ:38インチ・ライ角:70度・ロフト角:3度 ヘッド重量:約400g グリップ:SuperStroke Zenergy 3.0[17インチ] データ提供:ピンゴルフジャパン)。34インチでも37インチCBモデルでもヘッド重量は370gで、CBモデルに鉛を30gも貼っている割に、クラークはヘッドをクイックに動かしフォローを大きくとるので、けっこう強く握っているのかもしれません。今回は両方を試打しました。
CBのメリットは、クラブ重量が重くなってもストローク中に重さを感じにいため、スムーズにストロークがしやすく、芝目に負けない重い転がりのボールが打てる点です。デメリットとして、重量が重く長いため、細かなアジャストができない点が挙げられます。
パターに任せてオートマチックにストロークしたいなら、CBが適しています。余計な動きがしにくいため、より安定したストロークが期待できます。普段から、インパクトの強弱でタッチを出しているようなゴルファーは通常の34インチモデルが良いでしょう。本モデルはマレットパターの中では操作感がかなり良いので、オンセットに違和感がなければブレードと併用しても違和感が少ないです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → センター軸
ボール位置センター or 左寄り → 左寄り
各モデルがそれぞれどういう人に合うかの目安を記しましたので、下記記事を参考にご覧ください。
色々な握りで打ってみた
フェースバランス設定の本モデルは、どんな握り方にもマッチしそうです。通常の順手、クロスハンド、クローと色々試しましたが、個人的にはCBモデルはクロー、通常モデルは一般的なグリップで握ると安定していました
私は普段ブレードのセンターシャフトを愛用していますが、本モデルはオンセットの設定ながら、違和感なく非常に構えやすいです。フェースバランスでヘッド重心がシャフト軸線に近いという点では自分のパターとよく似ており、ストロークもしやすいです。マレットタイプらしく寛容性が高いため、よりやさしく安定してパッティングできました。
CBは、急激な動きができないぶんさらなる安定感があり、クローグリップで打ってみるとかなり好感触。打感は、ソフトでありながらしっかりとした感触があり、大きく打てば打つだけ打音や感触もちゃんと大きくなるようにできており、距離感も作りやすかったです。う~ん両方欲しい!
EYE-Qの効果は、正直言ってピンとはきませんでしたが、白いカラーに長いサイトラインはフェースの向きをハッキリさせてくれますね。グリーンとのコントラストも強いため、ストローク中のヘッド軌道もわかりやすいです。もしかしたら集中させてくれているのかもしれませんが、はっきりと自覚できなかったです。ヘッドの向きに不安はないため、スッと構えられてスムーズに始動できる点はすばらしいと思います。
同シリーズのもうひとつのオンセットモデル
スコッツデールテックシリーズにはもうひとつのオンセットモデル「KETSCH ONSET」がラインアップされています。違いはヘッド形状とサイトラインの入り方で、ヘッド後方が丸みを帯びていて、シャローバックになっています。こちらもお借りして構えてみると、ちょっとした違和感が…。シャフトが垂直ではなく、少しだけ左から接着されています。個体差かと思ったのですが、よく見たらシャフトに貼ってあるアークの分類も異なり、ALLY BLUE ONSETはストレート、KETSCH ONSETはセミアークです。ピンに確認したところ、わずかにセミアークになるよう設計されているのだそう。このちょっとの差が、各人のストロークの安定や再現性の高さに影響するため、パッと見はわからないですが、しっかりと作り分けしているそうです。
私の場合は、KETSCH ONSETよりALLY BLUE ONSETのほうが断然安定して打てました。ぜひ皆さんにも打ち比べてもらいたいです。微妙な違いですが、フィット感というか、構えや打った時の感覚が結構異なります。もしオンセットに慣れていないなら、KETSCH ONSETのほうが違和感は少ないかもしれません。
無念!ライ角調整はできません…
ひとつ残念なのが、これらオンセット2モデルはライ角調整ができないこと。シャフトがヘッドにダイレクトに刺さっているため、調整できるネックがないからです。性能を追求するうえで仕方のないところなのでしょうが、個人的にはほんのちょっとだけフラットにしてみたいなと感じました。とはいえ、ライ角が少し合わない人を想定し、トウやヒールを浮かして打っても方向がバラつく感じはありません。人によっては大した問題ではありませんが、調整できるのに越したことはないですね。
ALLY BLUE ONSETは、ゼロ(低)トルクというひとつの流行にとらわれず、異なる切り口から開発された今までなかったパターです。従来のパターと比べて、振り心地や使用感に良い意味で差が少なく、それでいて新鮮な感覚をもたらしてくれます。私、今真剣に悩んでいます。34インチとCB37インチ、どちらを買うか両方買うか…重ね重ね難題です。
小倉勇人(おぐら・はやと) プロフィール
ゴルフショップ「リルガレージ」店長。クラフトマン、クラブフィッター、さらに雑誌やウェブ記事の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。