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なぜG430は「LST」にのみカーボンを採用したのか

ピンゴルフから、Gシリーズとして約2年2カ月ぶりの最新作「G430」が発表された。「G410」「G425」とヒットを飛ばしている人気シリーズだけあり、待ち望んでいたゴルファーは多かっただろう。今作のラインアップで目を引くのは、シリーズ初のカーボンクラウン導入ではないだろうか。3機種のドライバーの中では、「LST」にのみ採用され、「MAX」「SFT」には搭載されなかった。それはなぜか? 真相を確かめるため、プロダクトマーケティングマネジャーの安齋伸広氏に話を聞いた。

たわみの確保が必須条件だった

「実はインパクトの瞬間の(ヘッドの)たわみを確保できないのであれば、3機種ともカーボンではなく、従来の『ドラゴンフライ・クラウン・テクノロジー(以下ドラゴンフライ)』でいくはずでした」と、安齋氏は笑顔を見せつつ語った。

「ドラゴンフライ」とは、前作「G425」でも採用された薄さ0.43mmのクラウン製法のことで、クラウンを極薄にすることで生まれた余剰重量を、外周やウエイトに利用して低重心化を図ったテクノロジーだ。

「『ドラゴンフライ』は、クラウンの素材内部がリブ(針金)になっていて、軽さとともに耐久性を確保できていました。そんな中、同シリーズのコンセプトである低重心化は、『G425』の時点でチタン製では限界に来ていて、白羽の矢を立てたのがカーボン素材でした。これまで以上の軽量化を図りつつ、耐久性を担保するには、『カーボンフライ・ラップ』テクノロジーに移行する必要があったのです」

16年ぶりの採用に踏み切った理由とは

同社は2006年発売の「ラプチャー ドライバー」以降、カーボンコンポジットは採用していない。だが、その間に他社ではカーボン化が進み、すでにクラウンだけでなくフェースまでに及んでいる現在では、今回の採用は後発とも捉えられる。その点について、安齋氏は「あくまでもうち(同社)の開発の根底に流れているのは、素材の新しさというより低重心化というコンセプトです」と、素材移行を念頭に置いた開発ではないとを強調した。

「これまでもカーボンだけではなく、いろいろな素材を試してきました。カーボンの研究も『ラプチャー』以降、止めていたわけではなく、研究を継続しながら新たな施策を繰り返してきました。前作を超える低重心化を図ることを念頭に、どの素材にすれば目的を達成できるかを考えた結果、今作でのカーボン搭載が実現したわけです」

440cc以内であれば耐久性が担保できる

では、なぜ採用が「LST」だけなのか――。冒頭に掲げた疑問については、ヘッド体積が大きく関係しているという。

「『MAX』『SFT』は460cc、『LST』のみ440ccの小ぶりサイズに設定しています。ずばり『LST』にのみカーボンを採用した理由は、耐久性を担保できるのが、440ccが限界だったからです。カーボンはチタンに比べ、軽量ではありますが耐久性は劣ります。カーボンの面積が大きければ大きいほど、割れてしまうリスクは当然大きくなります。『ラプチャー』での反省は、耐久性に難があったという点。今作では『LST』のほかに、同時発売のフェアウェイウッド(『G430 MAX フェアウェイウッド』『G430 SFT フェアウェイウッド』)にもカーボンを採用していますが、440cc以内であれば満足のいくたわみと耐久性が担保できるという判断に至りました」

形状から低重心を図った画期的なデザインで、いまだに中古市場で売れ続けている初代「ラプチャー」。当時から、革新的な構造の半面、甲高い音とともに破損の危険が高いことが指摘されていた。約20年以上の時を経て、同社がたどり着いたカーボンコンポジット搭載のヘッドは、440ccサイズ以内限定で良さを発揮できるという判断だったようだ。

あくまでも目的は“PLAY YOUR BEST”

「ユーザーのパフォーマンスを最大限に引き出すために、『ラプチャー』以前からカーボン採用の研究は続けてきました。その間にはタービュレーター(空力を生かすためのクラウン部の突起)を初めとした多くのテクノロジーを搭載してきましたが、今作では3機種それぞれの特徴に合わせた素材・構造を採用しました。弊社ではパーツ別にそれぞれの開発チームが、各自の研究を続けながら開発に取り組んでいます。ひとつの素材に固執した開発ではなく、各チームがアイディアを出し合い、経験と知識を積み重ねながら、ひとつの商品をどのように作り上げるかを模索しています」

PLAY YOUR BEST――プレーヤーの最高を生み出すために、真摯に向き合い続ける同社の開発陣。カーボン採用はあくまでもトピックスではなく、前作以上の低重心化を図るための施策のひとつという考え方だ。新素材ばかりに目を向けがちなメディア側の質問は、同社にしてみれば愚問なのかもしれない。

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