話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)

話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)
PING社で初となる女性のデザインエンジニア ブルック・タイニー氏

ゴルフ業界に数多くある仕事の中には、普段あまりスポットライトが当たらない専門職もある。業界を陰で支える人たち。そんなプロフェッショナルに光を当て、彼ら彼女たちの仕事ぶりを紹介する今企画。第4回は海外編、PING社で初となる女性のデザインエンジニアとして、レディスパター「GLE4」シリーズの開発に携わったブルック・タイニー氏だ。

初の女性デザインエンジニアがもたらした変化

ご存じの方もいるかもしれないが、同社のレディスパターはプロの間でも使用者がいるなど、非常に関心が高い。桂川有人がテストしていた旧モデル「GLE3」がSNSに掲載されて話題になったり、鈴木愛も昨シーズン終盤「GLe2 ECHOレディス パター」を試合で使ったこともあった

レディスモデルでありながらプロが手に取るほどの性能とは、非常に気になるところ。さらに、そのパターのデザイン設計の中心的な役割を担ったのが女性開発者と聞くから、さらに興味がわいてくる。タイニー氏はどんな経歴を経て、エンジニアの世界に飛び込んできたのだろうか。

話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)
大学ではゴルフ部に所属。インターンを経てPING社に入社した

彼女が所属するのはPINGのデザインエンジニア部門といって、レディスクラブのデザイン設計を請け負う。チームは8人体制で、彼女は紅一点、プロダクトごとに担当が割り振られる中で、レディスラインを任されている。

「14歳からゴルフを初めて、テキサスA&M大学で機械工学を専攻しながら競技ゴルフにも打ち込んできました。転機になったのは、コーチの紹介で参加したPINGのインターンシップ。開発現場に触れる中で、大好きなゴルフとエンジニア、その両方に関われる環境に魅力を感じました」とタイニー氏は振り返った。バリバリの競技ゴルファーが作るクラブは、やはりそのエッセンスが製品に宿るのは想像に難くない。

彼女はパターだけでなく、「GLE4」シリーズのドライバーやハイブリッドの設計も行っている。大学で学んできたCAD(コンピュータ支援設計)を使用した設計を行い、シミュレーションを繰り返して机上のデザインを形にしていく。

話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)
タイニー氏の先輩エンジニア エヴァン・グリアー氏(右)

インタビューに同席していた先輩エンジニアのエヴァン・グリアー氏は、彼女の役割をこう説明した。

「女性の視点がこれまで存在しなかったわけではありません。最終チェックの段階では女性の意見も反映されていました。ですが、設計の初期段階から開発に携わり、中心メンバーとして女性が関わるのは初めてでした。これまでは男性エンジニアだけで進めていたチームに彼女が加わったことで、女性視点をより取り入れやすくなり、チーム内のコミュニケーションもさらに密になりました」

「高性能は前提」その先にある難しさ

レディスモデルの開発で最も難しい点をタイニー氏にたずねると、「ピンの哲学であればクラブのパフォーマンスがいいのは当然です。その中で女性が好む見た目や仕上げにしないといけません。“どんなレディスがいいのか”を会社全体で考えて答えを出す。その最初の方向づけにいちばん苦労しました」と話した。

「数値で詰められる性能面と違い、見た目やフィーリングは明確な正解がない。カラーテーマや全体のトーンは、グローバルで何度も議論を重ねてきました」

話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)
ソールにはこだわり抜いたライラックカラーを採用

デザインに難航したからこそ、今回のパターの色味にはひと一倍思い入れがある。

「PINGにはアメリカにもイギリスにもパフォーマンスセンターがあり、人間の動作や見た目の研究を行う施設があります。ことしの流行として答えに出したのがライラックカラーでした」。GLE4パターのソールに差し色で入る紫をより淡くした色味は、とてもやさしさを感じさせる。

「ゴルフクラブもファッションと一緒で、ゴルファーは好きな色を選ぶ傾向にあります。トレンドを押さえない手はありません」

さらに話はモデル名にまで及んだ。従来の「セリーヌ」「ラプソディ」といったレディス専用名称から、今回は「アンサー」「オスロ」といったメンズラインと共通の名称へと統一したが、その中で唯一「ルイーズ」の名だけ残されたのだった(ヘッド形状は「DS72」)。

「ルイーズはピン創業者の奥様の名前です。彼女はアンサーの命名にも関わっていますし、ソルハイムカップの創設を提案した人物でもあります。女性のゴルフ界進出に貢献したことに敬意を払って、レディスラインにその名を入れました」

なぜプロからの評価が高いのか

「クラブのパフォーマンスがいいのは当然」と言うものの、実際に機能面でプロからの評価をもらえる理由はどこにあると考えているのか。

話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)
レディスものをプロが使っていても驚きはないと話すブルック氏

一貫しているのは、「性別を言い訳にしない」という考え方だ。「レディスラインだからといってメンズより劣るものを作ることはありません」ときっぱり。今作「GLE4パター」は3モデル展開で、それぞれ素材構成が異なり、「アンサー2D」は単一素材、「オスロ」と「ルイーズ」は複合素材となっている。いずれも低重心設計でアッパーにヒットしやすい構造になっており、順回転を期待できる。ヘッドサイズも意図的に大きめに設計されていて、「見た目のやさしさを出すためです。市場でも大きめヘッドが好まれる傾向にあるので取り入れました」と説明をした。

「レディスものをプロが使っても決して劣らない性能だと自負しています。試合で自分たちの手がけたパターを使っているのを見ても、驚きはなかったです」とブルック氏は胸を張った。

話題の「レディスパター」を生んだPING社初の女性開発者/THE PROFESSIONAL VOL.4 ブルック・タイニー (デザインエンジニア)
複合素材を採用した「LOUISE(ルイーズ)」

◇◇◇

競技にバリバリ打ち込んできた彼女だからこそ、プレーヤーが期待する機能やデザインをクラブに取り込むことができるのだろう。彼女の話を聞いて、プロも手に取ることに納得がいった。まだ入社4年目という若さで、開発部隊の中心となってクラブづくりに向き合うブルック氏が今後どんなモデルを世に送り出していくのか、興味は尽きない。(構成・編集/仮屋美遊)

この記事の画像をすべて見る
広告の後にも続きます

アクセスランキング

  • 総合
  • ツアー
  • レッスン
  • ギア情報

SPECIALコンテンツPR

特集記事PR

こちらもおすすめ

GDOサービス

GDOのサービス