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女子プロクラブ考アイアンシャフトのトレンドは?重カーボンが増えたのはなぜ?/女子プロクラブ考VOL.2
昨年の秋口に大々的な女子プロのクラブ調査を行ったが、彼女たちがどんなクラブを使い、どんなスペックで戦っているのかは、ほぼ同じヘッドスピードの我々のクラブ選びに大いに参考になるだろう。膨大なデータを元に、女子プロのクラブの傾向をギアマニアが分析・検証していく。2回目はアイアンのシャフトについて。
アイアンシャフト“プチ歴史” 宮里藍が軽量スチールブームに火をつけた
軽量スチールシャフトの代名詞、日本シャフトの「NSプロ950GH」が発売されたのは今から25年前。今や軽量スチールは、アイアンクラブの純正シャフトとして当たり前のように挿さっているが、それまでのアイアンのシャフトは、「重いスチールシャフト」か「カーボンシャフト」しか選択肢がなかった。当時は国内女子ツアーのカーボンシャフト使用率は、今よりも高かったと記憶しているが、それがいつしか、軽量スチールの使用率がカーボンを上回り、今は軽量スチールのほうが割合は多くなっている。
軽量スチールの定番化は、宮里藍の存在抜きには語れない。彼女が米ツアーに参加した2005年、アイアンのシャフトを日本シャフトの軽量スチールに突如チェンジし、その後アメリカで活躍。彼女の影響を受け、国内女子ツアーで軽量スチールシャフト使用者が一気に増えた。当初は90グラム台だったが、それ以外にも、80、70グラムと軽量化が進み、現在は60グラムのモデルまである。他のシャフトメーカーも“軽量スチール戦線”に参入したことで、もともと軽量がウリだったカーボンシャフト利用者はかなり減った。が、近年は軽量スチールと同じ重量帯のカーボンシャフトも増え、その性能も進化を遂げ、プロの間でも徐々に利用者が増えているのが現状だ。
実際に今回調査した数字にも現れていて、40人中11人と約3割の選手がカーボンシャフトを使用していた。トゥルーテンパー「スチールファイバーシリーズ」(厳密に言えば、カーボンシャフトの上に極細のスチールの繊維を巻き付けている)や藤倉コンポジットが投入した「TRAVIL」などが人気のカーボンシャフト。特に原英莉花や畑岡奈紗、稲見萌寧といった、いわゆるショットメーカーの成績上位者がカーボンシャフトを使用していることで、「女子プロ=カーボンシャフト」の印象がその使用率以上に強いかもしれない。
で、結局「スチールorカーボン」どっちが良いの?
スチールシャフトが軽量化して多様化したように、カーボンシャフトの多様化も進み、70グラム以上の重量級カーボンシャフトがここ数年で一気に増えた。目立つのは、前述した米女子ツアーでも人気の「スチールファイバー」だろう。稲見が90グラム台の「スチールファイバー fc90 cw」、畑岡も90グラム台の「スチールファイバー i95」を使用している。他のメーカーでいえば、岩井千怜は「REXIS KAIZA-i」、原は「ATTAS FF アイアン 85」と80グラム台のカーボンシャフトを使用。市販の純正シャフトに多い60グラム台の軽量カーボンシャフトを使うのは、申ジエ「ツアーAD AD-65 タイプII」の一人だけと、今や少数派になっている。
同じ重さなら「スチールシャフトで良いじゃないか?」とも思うが、カーボンシャフトはカーボン繊維の種類や巻き方、巻く層の数によって特性を変えることができ、設計の自由度が高い。より自分の好みが反映できるので、キックポイントひとつとっても、先調子でも手元側にしなるポイントを作ったり、元調子でも先端部を動きやすくして打ち出し角を稼ぐなどの細かい味付けも可能になる。女子プロは最先端の理論を学んだコーチをつけるケースが多く、コーチとスイング作りのやり取りをする中で、設計自由度の高い重めのカーボンシャフトに変更する選手が増えているのではと推測できる。
また、カーボンシャフトは振動減衰性が高い(シャフトの振動が少ない)ので打感がソフト。ひじや手首などを故障している人にはオススメで、実際にケガを考慮してカーボンに替えた選手は少なからずいる。構造上の違いで、同じ重量ならスチールよりカーボンの方を重く感じる人が多く、スチールシャフトからカーボンシャフトに変える場合は、少し軽くて柔らかめを選んだ方がマッチする事が多い。
80g台がカーボンの分岐点か
さて、今回調査した40人中、実に25種類のシャフトが装着されていて、そのバリエーションは多岐に及ぶ。もちろんスチールやカーボンあり、重さも硬さもバラバラ。重さは一番軽いアイアンシャフトを使うのは申の60グラム台、一番重いのは穴井詩、渡邉彩香の115グラム台と、その差は約50グラムと幅がある。硬さに関しても西村優菜のようなRシャフトもいれば、勝みなみのようなXシャフトなどスペックも様々だ。
重量帯に関してひとつ言えることは、80グラム台がカーボンの分岐点ではないかと思われる。90グラム台は14人いるが、3人がカーボン、11人がスチール、一方で80グラム台も14人いて、そのうちの5人がカーボンシャフトとその割合はわずかながら増える。90グラム以上のカーボンシャフトは硬く感じてしまうので、おそらく80グラム台がその使用の境目で、カーボンにするか、スチールにするか悩む重量帯となっているのだろう。
プロの使用するシャフトの硬さ表記は、参考程度として考えてもらいたい。飛ばし屋の二人が使うシャフトのフレックスは大違いで、ドライビングディスタンス1位の神谷そらが使う「日本シャフト NSプロ モーダス3 ツアー105」は「S」で、2位の穴井が使う「FST KBS ツアー FLT」は「R+」。シャフトメーカーによって硬さの設定が違い、KBSシャフトは表示よりもしっかり目でR+でもS以上のしっかり感がある。また同じシャフトでも硬さによってフィーリングが違ったりして、「R」はパッとしないけど「S」は気持ちいいということもある。シャフトの硬さ表記にメーカーの垣根を越えた基準はなく、各メーカーによって違うし、同じメーカーでもモデルによって変わる。結局はフィッティングを利用したり試打会を利用したりして、納得して決めることをオススメしたい。
ドライバーとアイアンのシャフトを比較してみると、アイアンシャフトの方が、様々なシャフトが選ばれていて、同じシャフトを選んでいる選手が少ないことがわかる。メーカーが用意しているアイアンシャフトに選択肢が少ないことが大きな原因ではあるが、アイアンはドライバーに比べると長く使う傾向があるので、女子ツアーの選手を見習ってアイアンシャフト選びは妥協しないことをオススメしたい。気に入ったアイアン(とシャフト)を長く使うことで距離感が育ち、意図通りに球を打てるようになるからだ。(文・田島基晴)
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