「初めてのマッスルバック」 入門 お買い得品は?まずは中古で挑戦
いつかは憧れのプロと同じマッスルバックアイアンを使いたい…そう願いつつ、躊躇(ちゅうちょ)してしまうゴルファーは多いはず。気持ちは大いに理解できる。打ってみたいが、不安のタネは打てるかどうかに尽きる。今回はマッスルバックを初めて購入する際の注意点や、オススメクラブを中古市場から紹介しよう。
解説しよう!そもそもマッスルバックとは
「マッスルバック」は通称であり、本来は「ブレードアイアン」や「フラットバック」と呼ぶのが一般的だ。アイアンは形状によって、大きく3つに分かれる。重量をトウ・ヒールやトップブレードに分散させたキャビティバックアイアン、重量を分散させて凹んでいる部分にフタをする中空アイアン、そして“くり抜き”がない構造のマッスルバックアイアンだ。
マッスルバックは構造上、ヘッドをあまり大きくできないため、重心位置がヒール側(シャフト寄り)になる。つまり重心距離が短い。飛距離性能には乏しいが、ボールの操作性は高いと言われている。ソール幅を広くすることも難しいため重心が高く、打ち出し角は低くてボールは上がりにくい。重心深度も浅いためミスへの許容範囲も狭い。
ツアープロがマッスルバックを選ぶ理由は?
こんなに難しい要素ばかりのアイアンを、ツアープロ、とりわけ海外の男子選手が好むのには理由がある。上級者はハンドファーストにインパクトしたいため、ボールにヒットする際のロフト角は小さくなる。その際、マッスルバックは高重心のためスピンがかけやすい。また重心距離が短いことで、球筋が操れる(操作性が高い)。入射や打点を繊細にコントロールしやすいヘッドで弾道を打ち分けて、難しいコースを攻略するのだ。
ただし、イマドキのマッスルバックは、かなり打ちやすくなっている。重心が高くなる原因だったホーゼルの長さが短くなり、重心高が下がってきた。ピンの「ブループリント T」などは、トウ側にウエートを配置して重心距離をフェースセンターに寄せている。
失敗しても“傷”は浅い ミズノ、ダンロップ製は高コスパ
ミズノは近年、複合素材を大胆に取り入れ、カッコ良さとやさしさを両立したアイアンをリリース。一方で伝統の「軟鉄鍛造、これぞマッスルバック」というモデルも脈々と作り続けており、中古市場では「MP」シリーズの価格が手頃感を増してきた。中でも「MP4」(2013年)、硬派な見た目にして慣性モーメント値が大きい「MP5」(2015年)は3万円台から見つけることができる。
ダンロップの「スリクソンZ945」(2014年)は、松山英樹が2015年から17年まで愛用しPGAツアーで3勝を挙げたアイアン。販売モデルには独特の「ツアー V.T. ソール」が搭載されており、地面とのコンタクトに優れる。筆者が“コレなら打てるかも”と思ったやさしさもある。こちらも3万円台から発掘できそうだ。
硬派なあなたにおススメは…やっぱり「タイガーモデル」でしょう
強い意志を持って選ぶなら、タイガー・ウッズの名が刻まれたテーラーメイドの「P7TW」(2019年)だろう。数量限定モデルでレアだ。見た目は難しそうだが、実はトウ側にタングステンを入れてあり構造は古くない。程度に大きく価格が影響され、3番~PWまでの8本セットで20万円前後にもなる。
また、石川遼が愛用するキャロウェイ「APEX MB アイアン ツアーバージョン」(2019年)もカッコいい。三浦技研製というのも惹かれるポイントだろう。4番からPWまでの7本セットで14万円前後が相場となっている。どちらも高価格で一見リスクが高そうに感じるが、リセール時の価格も高くなる点をお忘れなく。
“マッスル比率”を徐々に増やす手も…
マッスルバックを使う上で問題となるのは5番、6番といった長いアイアンだ。PGAツアーの選手ですら3番、4番はキャビティや中空にしているケースがある。よほどのハードヒッター以外は、ロングアイアンを使いこなすのは素直にあきらめよう。
とりあえず、練習場で何番まで打てるか確かめてみる。その結果で7番からPWまではマッスルバック、その他は中空やキャビティの単品アイアンにする、またはUTを入れるのもいいだろう。あるいは5番からPWまでの8本セットを購入、5番や6番は練習用…と考えるのはどうだろう?
マッスルバックは飛距離においては不利だが、アプローチ感覚でアイアンを打ちたい人にはメリットがあると思う。キャビティとマッスルバック、同じシャフトが入っている2セットを購入し、打てるようになってきたら徐々に“マッスル比率”を増やすのも楽しい(その際は各セットのロフト角をチェック)。ゴルフはスコアを競うものだが、一方でお気に入りのクラブで会心のショットを放ったラウンドもまた楽しい。ナイスショット一発で、美味しいお酒が飲めるのもゴルファーだ。そんなクラブを探すのもまた、ゴルフの楽しみではないだろうか?(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。
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