1本あると超便利「アイアン型UT」のススメ 中古から始めてみよう
ユーティリティ(UT)といえばウッド型を思いつく方が多いだろう。しかし、ゴルファーによっては、シチュエーションによってはアイアン型も意外と武器になる。今回はアイアン型UTの歴史と、その選び方のポイントをまとめてみた。
UTはかつてアイアン型がメイン
ユーティリティという言葉が一般的になるはるか昔、1988年にプロギアから発売された「インテスト」はアイアン形状のクラブで、ボティやフェース、シャフトがカーボン、ソールはステンレスというイマドキの構造だった。当時はパーシモン+スチールシャフトが全盛期とあって、その先進性が伺い知れる。そのカラーリングと形状から“タラコ”の愛称で親しまれた。
その後、メタルヘッドで中空構造の本間ゴルフ「LC210(シャチ)」、プロにも多くの愛用者がいたプロギア「ZOOM-i」(1997年)などが生まれた。ウッド型以前にアイアン型が流行していた時代があったのだ。
UTと同じ意味で使われがちなハイブリッドという表現は“ウッド+アイアン”の意味。ウッド型では1997年にリョービから出た「ビガロスメディア」がヒットした。1999年のキャスコ「パワートルネード」も人気があった。カタログには”ユーティリティクラブ”と表記されており、元祖と言えるかもしれない。その後、2001年に初代ゼクシオがユーティリティと名称を付けてウッド型UTを発売。2003年のテーラーメイド「レスキューMID」の発売も相まって世界的にウッド型が広がった。
アイアン型UTはやさしいのか?
アイアン型UTは難しいロングアイアンの代わりのクラブというコンセプト。ソール幅を広くし、中空化することで、重心深度を深く慣性モーメントを大きくしている。確かにロングアイアンよりもやさしい。
一般的にウッド型UTの方が高い寛容性を誇るが、アイアン型のメリットは構えやすさにある。アイアンと同じようセットアップしやすく、ラインを出しやすい。ただし、難易度はロフト角や長さなどのスペックによって変わることをお忘れなく。目安として、あくまで「同じロフト角のアイアンが打てる人にとってはやさしい」という注釈を加えたい。1Wショットのヘッドスピードが40m/s以下のアマチュアだと、ロフト角が20度以下のウッド型UTですらボールを高く上げるのに苦労するかもしれない。ただし、風が強い時や、低くて強い球を打ちたいケースではウッド型よりもアイアン型が重宝する可能性がある。
アイアン型UTの名器は
前述のプロギア「インテスト」、「ZOOM-i」、本間ゴルフ「LC210」のほか、アーニー・エルス(南アフリカ)が「全英オープン」で使ったフォーティーン「HI858」はツアー発でアマチュアにも人気があった。ロングアイアンと比べれば易しいとはいえ、装着シャフトが驚くほど硬い。最近使ってみた筆者も「よくこんな硬いシャフトでボールが上がったな…」と思うレベルだ。中古ショップで見つかっても3000円もしないはず。リサイクルショップなどで見つかることもある。
イマドキのアイアン型UT 中古で買うならコレ
ツアーでも、長い番手のアイアンを中空やキャビティタイプにする選手は多い。中でも目を引くのが、住友ゴム工業(ダンロップ)、スリクソンのアイアン型UTだ。スコッティ・シェフラーは「スリクソンZU85」(2018年)を入れている。中古で1万円台から見つけられる。他にはキャロウェイ「XフォージドUT」(2020年)などの使用者がいる。こちらは1万円台前半。
各社アイアン型UTをラインアップしているが、対象ユーザーはやはり限定的。ロングアイアンが打てるヘッドスピードとミート率が求められる。その点で、ロフト角が大きく、せめて5番アイアンの代わりになる番手だと、使える人は増える。テーラーメイド「ギャッパー ミッド」(2019年)にはロフト角24度のモデルがあり、ソール幅が広く、厚みもある。1万円台中盤で見つかるだろう。
ピンもクロスオーバーというアイアン型UTを継続して販売、「G400クロスオーバー」(2017年)にも25度の設定がある。ハードヒッターでなくても打てる純正シャフトが選べるのもうれしい。1万円台前半から見つかるだろう。
近年のアイアンのストロングロフト化を考えると、6番や7番アイアンの代わりになるアイアン型UTだって欲しいところ。“バナナ”の愛称で知られるフォーティーン「HI-877」(2016年)や「HI-3」(2022年)を試してほしい。「HI-877」は1万円弱、「HI-3」は2万円台前半で探したい。
アイアンの飛距離性能や寛容性が高まっている昨今は、アイアン型UTの支持率は相対的に下がるばかり。とはいえウッド型よりも構えやすく、ラインが出しやすいメリットは見過ごせない。ロングアイアンにとって代わる上級者やハードヒッター向けモデルではなく、ミドルアイアンの代役になるアイアン型UTの登場を筆者は切望している。(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。
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