“ロストボール”がおススメできない理由 中古好きギアマニアもボールは新品
2024/11/29
ゴルフショップにあるロストボールは、中古ギアの元祖といえる存在だ。最近ではゴルフ場近隣のコンビニでも見かけるほど。しかし正直なところ、筆者はひとりのギアマニアとして普段使いをあまりオススメできない。その理由がいくつかあるのだ。
糸巻きボールって知ってる? ゴルフボールのプチ歴史探訪
ゴルフボールは時の流れとともに進化してきた。あまりに古い話は置いておいて、40年ほどさかのぼってみよう。1990年代、ツアープロをはじめとする競技ゴルファーはバラタカバーの糸巻きボールを愛用し、一般アマチュアはソリッドボール(ツーピースボール)を使うという、二分された時代があった。
ゴム製の袋に液体を注入した芯に、細い糸を巻き付けた糸巻きボールは、バラタという天然ゴム素材をカバーにした。軟らかいフィーリングに加え、スピンをかけやすく球筋を操りやすいのが特徴。一方で傷がつきやすいことが欠点だった。ウェッジでトップしようものなら、パックリ割れてもう使えない。上級者でなければ、飛ばない、曲がる、すぐ消耗するといった具合だった。
それゆえ、飛距離やスピン性能で劣っても、耐久性のあるソリッドボールは“アマチュア用”のモノと言えた。しかし、ニック・プライス(ジンバブエ)や尾崎将司がブリヂストンの「レイグランデWF432」というソリッドボールを使って大活躍したことで変化が訪れる。さらに2000年、タイガー・ウッズがナイキの「ツアーアキュラシーTW」というウレタンカバーの3ピースボールを使ったのが決定打になった。糸巻きボールで圧倒的シェアを誇っていたタイトリストが、ソリッドボール「プロV1」を発表。糸巻きボールは姿を消していった。
ロストボールはそれぞれの“過去”が不明
ソリッドボールの進化は目覚ましく、耐久性の高い今どきのボールならば中古品、つまりロストボールを使っても、一見問題はなさそう。しかし、「プレーするからには良いスコアで回りたい」という上昇志向が少しでもあるゴルファーには、やはりおススメできない。
ゴルフボールは長い時間、水に浸しておくと、吸収した水分の影響で飛距離が落ちることが確認されている。保管状況が悪ければ劣化スピードが速くなる“生モノ”のようでもある。
見た目は新品と変わらないほど状態が良さそうなロストボールも、実際にはどうやって売り場にたどり着いてきたかが分からない。販売前にきれいに洗浄され、コーディングが施されることもあり、いつ、どこで集められたのかが不明だ。つい数週間前に林で発見されたものかもしれないし、数年間、沈んでいた池の中から引き揚げられたものかもしれない。表面をキレイにしても性能の劣化は補えない。ミスショットに見えた一打が、実は古いボールのせいかも知れないのだ。
新品とロストボールの価格差が小さくなっている
そもそも、筆者がゴルフを始めた35年前はボールがなにせ高価だった。最も高級だったダンロップの糸巻きバラタボール「ロイヤルマックスフライ」は1つ800円。1ダースで2000円を切る新品ボールなど存在せず、初心者はロストボールを買うしかなかったのだ。
しかし最近では信頼できる大手メーカーが安価な新品ボールを多数販売しており、低価格のボールでも品質がかなり向上している。個体差が非常に少なく、安定して性能を発揮してくれるだろう。グリーン上でのスピンの効き具合は高価格帯のツアーボールが一枚上手と言えるが、最長飛距離は値段でそれほど変わらないと筆者は考えている。ロングショットを考えれば、スピンが多くかかることは曲がることにも繋がるので、一般アマチュアにとっては一概に安価なボールが悪いとは言い切れない。
さて、いつもの本コーナーでは中古ギアを取り上げるが、今回は上記の理由から低価格帯の新品ボールに注目する。ビキナーや100切りを目指す方なら、ブリヂストン「ツアーステージ エクストラ ディスタンス」(2014)、タイトリスト「TRUFEEL(トゥルーフィール)」(2024)、本間ゴルフ「D1」(2024)を推薦したい。
100切りを達成し、90台を安定して出したい、いずれはシングルを目指すというのであればアプローチのスピン性能にもこだわろう。安価でオススメなのが本間ゴルフ「D1 SPIN」(2023)、テーラーメイド「ツアーレスポンス」(2022)、ダンロップ「スリクソン TRI-STAR」(2024)の3つ。もちろん、ツアーボールと呼ばれるプロ仕様、各メーカーの主力品ボールも候補に入れたい。値段を気にするなら、モデルチェンジ直後に価格改正されたマークダウン品を狙うといい。
ボールは同じ製品を使い続けることで、ショートゲームの距離感が養われる。いくつか試して「コレ」と決めたら、ある程度の期間は別のモデルに替えずにいたい。想定外に飛んでしまったり、飛ばなかったりする突発事故が減る。
ロストボールは確かに新品に比べれば安いが、“ロシアンルーレット”のような危険性を持つ。想定外のプレーを減らすこともスコアメークの基本。安全運転で行こう。(文・田島基晴)
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