「アプローチはショットと一緒」松山英樹が考えるアプローチの打ち方の基本とは/グリーン周りの思考回路#2
トヨタ、ソニー、任天堂――世界にはその名前だけで通用する日本生まれの技術がある。ゴルフ界でいま、その象徴とも言えるのが、松山英樹のアプローチだ。グリーン周りで、どう考え、どうクラブを選び、どう打っているのか。米フロリダで撮り下ろしたGDO編集部の完全独占企画。国宝級のテクニックを繰り出す、緻密な“思考回路”を本人の言葉から紐解いていく。(第2回/全8回)
ショットの小さいのがアプローチ
――アプローチの基本的な打ち方は?
ショットとのつながりで考えているので、その時々で変わってしまうというのが実情です。例えばショットのスイングが「フェースを開いて使いたい」であれば、ウェッジでもフェースを開き気味にしていないと気持ち悪い。ショットとアプローチを別々に考えるのが苦手なので、結果的にアプローチもショットに応じていろんな打ち方に変わります。
――フェースの使い方が変わるということですか?
フェースの使い方もそうですが、他にも体の動かし方や体重配分なども、ショットに影響される。ちょっとずつショットに影響されるので、そこはアプローチの練習で、細かく調整しています。
――元々、アプローチは「こうやるべき」などはないということ?
あんまりないですよね。アプローチの基準はショットからくる。ショットの小さいのがアプローチですし、アプローチの大きいのがショットと考えています。細かく言えば、「ショットからくる」のか「アプローチからくる」のか、やり方は2種類あります。ショットからきた時にアプローチがどうしても合わなかったら、アプローチからショットを合わせるようなケースもあります。
――ボール位置はどこですか?
「左足かかと線上」のイメージです。でも、これもショットの打ち方が変われば微妙に変わります。
――スタンスは?
左足のつま先をちょっと開きます。それはクラブの抜けを良くしたいためです。
――ハンドファーストに構えますか?
自分の中の真っすぐで構えていますが、見ている人からしたら「ハンドファースト」や「フェースが開いている」と見えるはず。ちょっと前までは本当に「シャフトは真っすぐ」で構えていました。
周りから「フェースが開いていると言われます」
――フェースは開いている?
開いている感覚はないんですがね。転がすアプローチの時以外は、基本的にちょっと開いてるように見えるみたいで、よく周りからは「開いている」と言われます。昔、谷さん(谷原秀人)に「もっとフェースを真っすぐにしなよ」と言われたことがあって、でも、それがどうしてもできなかった。チップインを狙う時などは、フェースは真っすぐになっていきます。
――フェースを開くのは保険をかける意味もあります?
それは意識したことないです。普通に自分がパッと構えた時に、フェースの向きがこれ(やや開いている)なんです。
――そこが基準になっていますか?
はい。56度で柔らかく使いたい時にちょっとオープンにします。でも60度ほどは開きませんし、それ以上開くケースなら60度を使います。60度より56度でフェースを開いたほうがイメージ出る時は、56度を使います。
――56度も60度も、打ち方は一緒ですか?
一緒です。番手を変えて打っているだけです。
――体重配分は?
スイングやその時の芝のコンディションで変わるので一概に言えませんが、体重配分は基本的に左6:右4です。左の比重が絶対的に多い。ちょっと嫌なライでも、例えば逆目などは左7にもなる。ちょっとでもかむと飛ばない球になるので、左足体重にしてしっかりカツって入れるイメージ。8:2になることもあります。(取材・構成/服部謙二郎、桂川洋一)
第3話「距離感の作り方と56度誕生秘話」に続く…
松山英樹 プロフィール
1992年愛媛県生まれ。幼少期にゴルフをはじめ、東北福祉大時代の2011年にマスターズに初出場、アジア出身選手として初めてローアマチュアのタイトルを獲得した。プロ転向1年目の2013年に日本ツアーで賞金王に輝き、同年秋にはPGAツアーに本格参戦。21年のマスターズで日本の男子選手として初めてメジャータイトルを獲得した。24年パリ五輪銅メダリスト。PGAツアー通算11勝。近年はウェッジワークの技術の高さで世界的に名声を集めている。