13年ぶり日本で参戦 タイガーのクラブ変遷をマーク金井が解説
24日(木)に千葉県のアコーディア・ゴルフ習志野CCで開幕する米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」。注目選手の一人は自身の今シーズン初戦を迎えるタイガー・ウッズだ。日本での参戦は2006年以来、13年ぶりとなる。今回はクラブアナリストのマーク金井氏がこの間のウッズのセッティングを振り返り、解説する。
つかまりがニュートラルなドライバーを好む
ウッズは現在テーラーメイドの「M5 ドライバー」を使っています。遍歴をたどると、ナイキのクラブを使っていたときや、それ以前のタイトリスト時代から「ペンシルネック」と呼ばれるネック部分が細くて長いヘッドを好んでいました。
2002年にナイキのクラブを使い始め、「VR(ヴィクトリー レッド) ツアー ドライバー」を長く用いました。これはペンシルネックの洋ナシ型。それ以前に使っていたタイトリスト「975D チタン ドライバー」に比べ、ヘッドは大型化(400cc)になっていました。とても“顔”が良く、完全にウッズ選手の好みで作ったクラブでした。
ナイキは2016年にクラブ製造事業から撤退。ウッズは17年からテーラーメイドと契約し、最初は「M2 ドライバー」を使用しました。テーラーメイドのMシリーズは発売当初、M1がプロ向き、M2がアマチュア向きと言われていました。ただ、同じテーラーメイド契約のダスティン・ジョンソンもそうですが、M2を使うプロ選手が多く、M2は今でも「名器」と呼ばれています。
操作性はM1の方が良いのですが、重心角が少なく球のつかまりがあまり良くありません。一方、M2は重心距離と重心角のバランスが良く、つかまりがニュートラル。私はこちらの方がプロを含めて使うゴルファーが多いだろうと言及しましたが、実際そうなりました。
ウッズは2018年に「M3 460 ドライバー」を使い始めましたが、これはうまいネーミングでした。M3は、M1とM2の良いところを足して「1+2=3」として進化。M2のニュートラルなヘッドにM1の調整機能が加わり、うまくバランスの取れたクラブです。
同時に発売された「M4 ドライバー」はM2の後継というより、大型ヘッドの「エアロバーナー ドライバー」が進化したクラブでした。重心距離が伸びて慣性モーメントが大きくなったため、M2のような操作性がなくなったため、ウッズは選ばなかったのだと思います。
現在は「M5 ドライバー」を使っています。M3、元をただせばM2からの進化系。このクラブチョイスは分かりやすいですね。ウッズはクラブの重心特性を理解した上で、選んでいるのでしょう。元々、大型ヘッドをプロの中でいち早く取り入れるなど、クラブ変更に違和感を持たない選手なので、自分のイメージ通りにヘッドが挙動し、フェースコントロールがしやすいクラブを選んでいるようです。
重心が浅く低スピンで打てるクラブ
M3、M5ドライバーについては、ウェートによる調整機能が付いていますが、プロの場合、この機能はあまり使いません。ウェートをいじると、重心位置が変わってしまうからです。クラブで大事なのはヘッド形状に対して、芯の位置を感じ取れるかどうか。もう少し正確に言うと、フェースのセンターに近い位置に重心が欲しいわけです。ウェートをずらすと、見た目と芯の位置もずれるわけで、ツアープロは抵抗感があります。
テニスラケットを見れば、ラケットの中心にスイートスポットがあるのは一目瞭然です。ゴルフクラブのヘッドは視線から離れた位置にあります。アマチュアには感じづらいかもしれませんが、「スイートスポットがこの辺りだろう」と感じてセンターに構えるわけです。そこに実際の芯があるものが良いわけです。
ウッズはつかまり過ぎず、かといって右に逃げてしまうわけでもない、ニュートラルなクラブを好んでいます。それはクラブの見た目と重心の位置が合致し、構えたときに「こんな球が打てる」とイメージし、思った通りの球が出るクラブだからです。
歴代のクラブを通してみると、重心深度は浅めで、重心角は20度以下。重心が浅いということは、低スピン弾道になるということです。ウッズぐらいのヘッドスピードがあると、スピン量が増えてしまうと吹き上がってコントロールしきれないこともあります。そのため、低スピンが打てるドライバーを好んで使っているのだと思います。