テーラーメイド「Qi35」コア “10→35”でやさしさUP 打感もチタン風味に
“WHY 35?” テーラーメイド「Qi35」が「Qi10 2」ではなかった理由
テーラーメイドからフェース面上の重心位置(CGプロジェクション)に着目した「Qi35」がリリースされた。上下左右の慣性モーメント値1万超えを果たした「Qi10」から一年。次から次に新モデルを展開する中で、正直「前作と一緒でしょう?」と勘ぐってしまう気持ちを抑え、同社ハードグッズプロダクトディレクター・高橋伸忠氏に今作の性能を聞いた。
「これ、めちゃくちゃスゴいことですよ」
「今作の肝(キモ)は、慣性モーメントを大きくしているのに、フェース面の重心を下げたところです」と、登壇直後の高橋氏はやや興奮気味に今作の特徴を教えてくれた。
「これ、説明するのは簡単ですが、実現したことはとてつもなく大きな進歩です。投影面積を大きく、重心位置も後方に配したままでは、どうしてもスピン量は増えてしまいます。が、今作はフェース面上の重心ポジションを上げず、むしろ下げることでスピン量を抑え、強弾道を生み出すことができる。深重心=スピン増という従来の固定観念を覆(くつがえ)す画期的な構造です」と力説する。
あの11年前モデルの強さ+前作10Kのやさしさ
「例えば約11年前に発売された『SLDR ドライバー』は、18gのスライドウエート機能をソール前方に搭載したロー・フォワード・CG設計を採用していました。非常に低スピンで強い球質になる構造でしたが、その半面、慣性モーメントは非常に小さく、安定感に欠けていました。言い換えると、強弾道を打つということは『SLDR』の時点で達成していたのですが、それを今作では前作の“10K”高慣性モーメント性能を加えることで、安定感も両立することに成功したのです」
ソールウエートを左右にスライドできる革新的な性能だった「SLDR」。当時、その飛距離性能の高さに驚かされたゴルファーは多かったが、重心は浅く、アベレージゴルファーには「ボールがつかまらず上がり切らない」という声が多かった。カーボンフェースによってその懸念点も払しょくし、ようやく同社が掲げる飛び性能にやさしさが追いついたということなのだろうか。
「実は今作で一番やばいのはコアです」
では、直近である前作「Qi10」との差はどこにあるのか。
「全機種ともにフェース面の重心ポイントが下がったことで、重心より上の低スピンエリアが広がり、飛距離性能がアップしました。特に違いを感じられるのは“コア”と呼ぶスタンダードモデル『Qi35 ドライバー』で、大きく進歩したと感じる人は多いでしょう。慣性モーメントが10K超えとはいかないまでも、それに近い9000g・cm2台で、しかも前後のウエートが調整できる。調整することで今までの『LS』よりフェース面の重心をより下に持ってくることができ、投影面積が大きいのに弾道の強さが従来のLS並みに。そういう意味で、もはや全機種とも『Qi10』のパート2というニュアンスを超え、『突出した存在』という意味で、新たなネーミングが付いた次第です」
確かにこれまで『SIM』→『SIM2』、『ステルス』→『ステルス2』、『Qi10』の次は『Qi10 2』と予想できる。しかし、あえてネーミングを「Qi35」とした理由は、革新性を強調したかったからだという。
※実際の意味は、今作のテーマである3つのFの頭文字「Form(形状)」「Function(機能)」「Fit(フィッティング)」からとった「3」と、5種類のヘッド展開「5」を組み合わせた数字。
真摯にやさしさを追い求め続けた軌跡
最後に、同名ブランドが2モデルずつ展開され、初代がややハードなアスリート寄り、2代目がやさしいアベレージ寄りというサイクルを繰り返しているイメージは、意図したものなのかを聞いた。
「ハード→やさしめ→ハード→やさしめ。では、今作はやさしめ?」とぶしつけに聞くと、高橋氏は「そんなサイクル、考えていませんよ」と笑う。
「我々はずっと飛距離とやさしさを両方とも求め続けてきました。『SIM2』から『ステルス』のタイミングで、チタンからカーボンフェースという大きな変革はありましたが、基本的に飛距離もやさしさも両立したモデルを追ってきた結果です。寛容性を高める=スピンが増える懸念点を減らすためにはどうしたら良いか? 試行錯誤を繰り返していくうちに、今作の大きな一歩が生まれました」
一年前に「正直、毎年のモデルチェンジは早すぎない?」という質問に、「毎年買い替えなくても、情報のみでワクワクしてもらうだけでもいい」と答えた高橋氏。常にユーザーの予想より一歩先をいく製品を作り続ける――。そんな同社の姿勢が、3つの「F」と5つのヘッドに込められている。さて今作は情報のみ? それとも買い替える?(編集部・内田佳)
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