ウェッジのシャフトはアイアンと“同じ重さ”で大丈夫?【女子プロギア考察#5】
アイアンとウェッジは似た系統のクラブだし、流れをそろえるために同じシャフトで組んだほうがいい、という考え方もある。一方で、アイアンとウェッジは用途が違うのだからシャフト銘柄は変えるべき、という意見もある。“令和の試打職人”こと石井良介プロが、女子プロのクラブを見ながら、ウェッジのシャフト選びについて考察した。あなたのウェッジシャフトはいかがだろうか?
アイアンが軽めなら、ウェッジは“ちょい重”でもいい
アマチュアの皆さんはウェッジのシャフトについて、アイアンと同じほうがいいのか、アイアンより少し重くしたほうがいいのか、決めかねている人もいると思います。
一般論として、アイアンに重いシャフトを挿していたらウェッジもそのままでいいと思います。アイアンで100g以上や110g以上のシャフトを使っている人は、竹田麗央選手のように、ウェッジも同じ重さ、または同じモデルでもいいでしょう(アイアンもウェッジも共に「NSプロ MODUS3 TOUR120 S」)。
一方で、アイアンに80g台とか70g台のシャフトを挿しているのなら、ウェッジは同じでもいいですが“ちょっと重く”してもいいんじゃないかと思っています。※アイアンとウェッジのシャフトが、同じ重量帯の選手が31%、ウェッジの方が重い選手は62%、不明その他7%(編集部調べ)
小技を使うウェッジは重さを感じたほうがいい
ウェッジというクラブは、速く振りたいわけでも遠くに飛ばしたいわけでもありません。それでいて、グリーン周りのラフやバンカーなど、抵抗が強いライに対してエネルギーをぶつけなければいけないので、クラブがあんまり軽いと当たり負けしたり打ち急いだりするというミスが起こりやすいんです。
アイアンはロフトを立てながら当てて前に飛ばすのが目的ですが、ウェッジはロフトを増やしながら打ったり、スピンをかけたり、やわらかい球を打ったり、弱く打ったり――というように、状況に応じていろいろなことをやりたいクラブ。となると、重量を手で感じられるほうがスイング中に挙動や動作が安定しやすいと思っています。
シャフトによってアプローチの精度は変わる
個人的なお話をすると、速く動くシャフトがあまり好きではなくて、学生時代から「ダイナミックゴールド S400を入れたらいい」という“刷り込み”のようなものがあって、ずっと入れていたし「これで正解」と思っていました。その後、あるスチールシャフトが出てそのままサンドウェッジに入れたら、球が引っかかるわ飛んでいくわで“わちゃわちゃ”してしまって(苦笑)。でも、そのシャフトのウェッジ用が出たときに挿したら打ちやすかったので、それで収まっています。
しなりを感じたほうがタイミングを取りやすい
ウェッジはフルショットをしないクラブなので「シャフトを硬くする必要があるのか?」と思ってしまいます。アイアンは強く打ち込むから、その“圧”に対してシャフトが負けないでほしい。そのため硬くするというのは理解できます。
でも、ウェッジはやわらかく打つので「しならせたい」という感覚があります。しならないとタイミングが取りづらいというか、本来“ブランコ”みたいにしなって戻るような感じが欲しい。そうじゃないと打ち急いでしまう。
そういう意味で、軟らかめのシャフトは「タイミングを取る」という技術はあったほうがいいでしょう。それを上手く使えると性能を出せるけれど、力任せに打っちゃうと球がどこかへ散ってしまう。軟らかくてしなるモノを力で“バーン”と振ったら、暴れてしまうのは言うまでもありません。
フルショットをしないから、硬いシャフトを入れる必要はない
林菜乃子選手もアイアンとウェッジのシャフトとフレックスは同じ(NSプロ 850GH R)で、決して硬いフレックスではありません。とりわけ青木瀬令奈選手のように、アイアン(「NSプロ 750GH ラップテック」S)のシャフトよりもウェッジ(NSプロ 850GH R)のフレックスを落とす選手もいます。
ウェッジはフルショットをあまりしないクラブなので、硬いシャフトを入れる必要はない、というのがボクなりの考え。そういう点で、女子プロのウェッジのシャフト選びについて、アマチュアの皆さんも真似していいところがあるのではないでしょうか。

石井良介(いしい・りょうすけ) プロフィール
1981年生まれ、神奈川県出身。PGAティーチングプロの資格を持ち、トラックマンを使った最新理論やデータに基づくレッスンが好評。YouTubeチャンネル「試打ラボしだるTV」も大人気。