最新シャフト打ち比べ 4大メーカーをズバッと徹底比較 ~2023年版~
フジクラ、三菱、グラファイト、USTマミヤの最新モデル4本
4大シャフトメーカーの2023年発売モデルが出そろった。藤倉コンポジット「SPEEDER NX BLACK(以下BLACK)」、三菱ケミカル「TENSEI Pro Blue 1K(以下TENSEI)」、グラファイトデザイン「Tour AD VF(以下VF)」、USTマミヤ「LIN-Q BLUE EX(以下LIN-Q)」と、例年にはない個性的なラインアップ。プロを含めて年間1000人以上のフィッティングを行うというクラブフィッター・吉田智(さとし)氏が、4モデルの特性を解析する。
■そもそもどんなシリーズ?「最新4モデルの立ち位置」
そもそもシャフトメーカーは、毎年特性の異なるモデルを発売するため、同年モデルといっても各社ジャンルも違えばターゲット層も大きく異なる。まずは、最新モデルがどういう立ち位置で、どんなシリーズの流れで発売されたかを把握しよう。
藤倉コンポジット「SPEEDER NX」は、7代目まで続いた“走り系”と呼ばれる鋭い走り感を持つ「Speeder EVOLUTION(スピーダー エボリューション)」の後継シリーズ。先端と手元側のトルクを締める新技術「VTC」を採用し、フェースターンしやすいことを特徴としている。初代「SPEEDER NX」は、名称には入っていないものの、そのカラーリングから通称は“BLUE”。より先端剛性を高め、つかまりを抑えた22年発売2代目「―GREEN」に続いて、今作「―BLACK」は3代目となる。
三菱ケミカル「TENSEI Pro 1K」シリーズは、米国三菱の企画で始まった逆輸入シリーズ「TENSEI(日本語の“転生”が名称の由来)」から派生したモデルで、織物状の素材「1Kクロス」を手元側に配置したシャフト。国内発売としては3モデル目で、21年発売「―Orange」、22年発売「―White」がどちらも元調子だったのに対し、初の中調子となっている。
グラファイトデザイン「Tour AD」シリーズは、国内男子ツアーにおけるウッドシャフトの使用率が高いツアーブランド。松山英樹がいまだに09年発売「―DI」を使用し続けていることからも分かる通り、根強いファンが多い。手元側に特有の縞々(しましま)模様のデザインと、モデルごとに名付けられるネーミングの頭文字、英文字2文字が特徴。今作「VF」は赤と黒のカラーリングで、「Victory Force(勝利の力)」の略となっている。
USTマミヤ「LIN-Q」は、19年から米国市場にて発売され、海外ツアーでは多くの選手が使用しているグローバル戦略シリーズ。ナノアロイ樹脂を配合した「Q ファイバー」という新素材を配置する「Q・Ply Core(キュー・プライ コア)テクノロジー」を採用することで、エネルギーロスを抑えながら、飛距離性能と方向性を両立する。今後は、同社を代表する「ATTAS(アッタス)」シリーズと平行して発売していくことを発表し、初の国内モデルとして「―BLUE EX」が登場した。
■気になる振動数は?「最新4モデルのスペック比較」
数値にこだわりたいという人には、スペック表を見比べてもらいたい。50g台の硬さS(5S)&1168mmの長さで比べてみると、唯一の先調子系「BLACK」がトルク4.9度と大きく、振動数は251cpmと小さいため、数字上では一番軟らかいモデルといえる。一方トルク3.7度、振動数260cpmの「TENSEI」は、相対的に硬めということになる。
ただし、これはあくまでも目安の話。振動数の数値も自ら計測した吉田氏は、次のように解説する。
「“トルク”はスイング中にねじれ幅の大きさを表し、“振動数”は手元側を固定した状態で、先端側に重りを付けて振動させた1分間の振られた数になります。大まかな目安にはなりますが、同じ数字だからといって、そもそも調子が違ければ感じる硬さは異なります。あくまでも参考程度に把握してください」(以下、吉田解説)
■一番飛ぶのはどれ!?「最新4モデルの試打比較」
飛距離については『BLACK』が一番出ていました。特性はまさに“素直な先調子”という表現が的確かと思います。しっかりと手元の剛性感があって、全体がしなる先調子というイメージ。一部分が硬いor軟らかいというところがなく、全体がしなってくれて自然とボールをつかまえてくれます。
一方の『TENSEI』は“クセのない中調子”で、振りやすいのですが、全体がムチのように動くわけではありません。手元と先端側の剛性を高くして、中間で程よくしなるイメージ。純正モデルに多く見受けられる特性で、非常にターゲット層が広いといえます。
『VF』は“振り遅れが少ない手元調子”で、手元がゆっくりしなり戻る典型的なものとは違い、適度に手元側に剛性を持たせてインパクトで遅れる心配を起こさせない働きが特徴です。また、先端の剛性もしっかり感じさせるため、ボールを逃がして打ちたい場合はきちんとフェード弾道も打たせてくれます。
『LIN-Q』も“クセのない中元調子”ですが、こちらは全体的にムチのようなしなり方をしながらも、きちんとしなり戻りを助ける仕上がりです。中元部分にたわみを大きく持たせることで、全体がしなるイメージ。基本的に先端が動くシャフトではないため、高い打ち出しにはなりにくいです。
■ひと目で分かるマッピング図で「最新4モデルの特性比較」
各シャフトの特性が把握できるように、スピン量を縦軸、つかまり具合を横軸でマッピング図に表してみました。
『BLACK』は、歴代『BLUE』『GREEN』よりスピン量は適度に入り、つかまり感も程よく強めです。『TENSEI』は、スピンはそれほど多く入りませんが、中間的なつかまり具合が特徴。『VF』と『LIN-Q』は、つかまり具合は抑えめで、比較的に『LIN-Q』のほうが低スピンに収まるのでこの配置になりました。
昨年発売のUSTマミヤ「The ATTAS V2」も“クセのなさ”が特徴でしたが、先端と手元側の剛性を高め、真ん中だけがしなる中調子でした。自らタメをつくれない、球にバラツキがある方は『―V2』向き。「LIN-Q」はあえて硬い部分を強調して作らず、中元部分にたわみを大きく持たせることで、自らタメをつくっていけるゴルファー向きに仕上がっています。
■どんなゴルファー向き?「最新4モデルのターゲット層」
「BLACK」は、ドライバーが苦手でスライスが多く、一般的な先調子を打ってもスライスが直らない人向き。タイミングよくボールをつかまえてくれるので、右のミスで悩んでいるゴルファーに試してもらいたいです。「TENSEI」は、これからカスタムシャフトを試してみようという人向けで、フィッティングで一番最初に打ってもらいたいモデルです。振りやすいor振りにくいで、先or手元を判断してはいかがでしょうか。
「VF」は、手元調子がいいなと思ってはいるけれど、ボールが右に逃げがちな人向き。意図しない球が出て、右OBが出てしまうゴルファーに適しています。「LIN-Q」は、ずばり左のミスに悩んでいる人。手元調子系のシャフトを好む方に向いています。
試打の導入として、まずは「TENSEI」を試すことをお勧めします。そのあとで自分のスイングを理解しながら、切り返しでタイミングが取れない理由がどこにあるかを把握しましょう。上記のつかまり具合を表したマトリックス図とは別に、動きすぎて気持ち悪い場合は手元側の剛性が比較的に高い「BLACK」か「VF」、逆に動かなすぎる場合は、中元部のたわみが大きい「LIN-Q」といった形で選ぶと良いと思います。
最新4本モデルの特性は分かっただろうか――。「BLACK」「TENSEI」「VF」「LIN-Q」それぞれの特徴を把握したところで、実際に試打をしてフィーリングが合うかを吟味してみよう。
取材協力/カレドニアン・ゴルフクラブ
吉田智(よしだ・さとし) プロフィール
「PPREMIUM GOLF STUDIO(プレミアムゴルフスタジオ)」所属。長年積み重ねた経験と的確な分析力で、成田美寿々をはじめ多くのトッププロから厚い信頼を得るクラブフィッター。カリスマフィッターMr.吉田としてYouTube活動をメインに、数多くのゴルフ誌や関連のテレビ番組にも出演中。
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