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なぜキャロウェイは「エピック」の名を残さず「パラダイム」にシフトしたのか

キャロウェイから、2023年モデルとなる「パラダイム」シリーズが発表された。従来の流れを考えれば、通常「エピック」の後継モデルが登場すると予想されるなか、全く新たなネーミングで勝負を挑んできた。最大の特徴は“360度カーボンシャーシ”と呼ばれる、耐久性の高い2種類のカーボンを帯状に成形した新構造。2000年代初めにカーボンウッドへの挑戦を真っ先に始めた先駆者が、再び大きな舵を切った経緯は何だったのか――。

「実は『エピック』の名を残そうとも考えていた」

名称について、「『エピック』の名前を残そうという意見があったことも事実です」と語るのは、同社プロダクト担当・田野弘幸氏。

「過去の『エピック』シリーズは、革新性の高い『ジェイルブレイクテクノロジー』や『AIフラッシュフェース』を打ち出し、多くのヒット作を生んできました。もちろん新たなモデルを検討するなかで、名前を残すべきという意見が出ていたことも事実です。ただ、コンセプトを追求するうえで、『エピック』の後継というより、パラダイムシフト(常識や先入観に捉われない劇的変化)を起こす可能性を秘めた革新性を持ち合わせていたため、早い段階でネーミングの切り替え案が浮上しました」

ネーミングについては、追加情報として「社内でも『PARADYM(パラダイム)』が読みにくいと懸念する声もありましたが、そこも含めて新たに覚えてもらいたいという意図を持ち、ネーミングが決まりました」と付け加えた。

「カーボンフェースは検討材料のひとつ」

例年、同社と同じタイミングで新商品の発表を行うテーラーメイド。同週にカーボンフェースの2代目となる「ステルス2」を発表したが、「開発段階でカーボンフェースは考えていた?」と田野氏に聞くと、苦笑いを浮かべつつ、「実際に試作テストまでは行っていませんが、ひとつの検討材料にはしました」と正直に答えてくれた。

「ですが、弊社はボール初速を上げることを前提に、19年発売の『エピックフラッシュ』で初搭載したAI設計の『フラッシュフェース』を継続して打ち出しています。人の頭脳では設計できない複雑なウネウネ形状を採用しているため、現在のカーボンの技術ではまだ再現し切れない点が存在します。今回採用したフォージドカーボンの技術を使用すれば、可能性はなくはないといえますが、23年の現時点ではチタン以上のものを開発できない、というのが今作での答えです」

行き着いた? 道半ば? 「パラダイム」が掲げる未来への展望

21年「エピック SPEED ドライバー」では、カーボン複合素材の占有率は、ソールに対してそれほど高くはなかった。「パラダイム」ではソールの大半を占め、これまでにないほどの余剰重量を生んだ。正直カーボンヘッドとして行き着いた感はあるのか?という質問には、「まだまだ行き着いたとは思っていません」と即答する。

「今作でのフォージドカーボン採用は、新たなクラブ開発の転換点と考えています。これがゴールではなく、間違いなくこの先にも進化し続ける過程だと感じています。これまで以上に成形の自由度が増したことで、今後さまざまな方向に展開していくでしょう」

カーボンヘッドの開発を模索する一方、同社はその歩みを止めていたわけではない。「02年発売の『ビッグバーサ C4 ドライバー』で一度、ヘッドが全てカーボン複合素材というクラブに挑戦しました。そこに端を発し、10年に軽量かつ高強度のカーボン素材をボディに採用した『FT TOUR ドライバー』、11年にはランボルギーニ社との共同開発で生まれたフォージドコンポジットを採用した『RAZR HAWK ドライバー』が誕生しました」と、これまでの経緯を説明。

最後に、「今作の“360度カーボンシャーシ”は、そこで得た知識と経験が生かされた技術です。クラウンの『トライアクシャル・カーボン』と一度に成形を施す特許申請中の新テクノロジーで、常識をくつがえせると確信しています」と力強く展望を語った。

なぜ同社は「エピック」の名を残さず「パラダイム」にシフトしたのか――。田野氏の話を聞き、単に新名称によるマーケティング手段ではなく、“転換点”としての必然性を実感した。近い将来、「AIカーボンフラッシュフェース」の実現の可能性も低くはない気がしてくる。

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