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女子プロスペック事情 ドライバーはハードでアイアンはやさしめ “ギャップ”があるのはなぜ?【女子プロギア考察#1】

昨シーズン後半戦に撮影した女子プロのクラブセッティングを元に、彼女たちのクラブを徹底リサーチ。そこから読み取れるものはナニか。ボクらが参考にしていいことは? “令和の試打職人”として数多くのクラブを打つ石井良介プロの視点で分析してもらった。1回目は、ドライバーのロフトやアイアンのシャフトについて。

ドライバーはしっかり系、アイアンはやさしい系

女子プロの皆さんのクラブセッティングを見て面白いと思ったのは、8.5度とか9度とか思ったよりロフトが立ったヘッドを使っている選手が多いことです。ドライバーはアッパー系でスイングする選手が多いためでしょう。同様にドライバーのシャフトも、けっこうしっかり目のものを使う傾向が見てとれます。一方で、アイアンには軽量クラスの「ゼロス」が挿さるなど、けっこう軟らかいシャフトを使っている選手が多い印象があります。もちろん中にはしっかりと硬いシャフトを使っている選手もいますが。

ドライバーのヘッド速度が40m/sちょいのアマチュアには、女子プロのセッティングが参考になる。一般的にはそのように言われますが、果たしてホントにコレが参考になるのか?って思うくらい、けっこうギャップがあるセッティングじゃないでしょうか。言い換えれば、それぞれの選手たちのスイング特性に合わせてクラブを作って選んでいるんだろうな、と思いました。

ひと桁のロフトでアッパーに打ち抜く

例えばスリクソンを使う選手たちは、同じダンロップのゼクシオ系も含めてロフト8.5度や9.5度が多い。また、穴井詩選手が飛ばし屋であることは置いておいても、「Qi10 LS」というあれほどスピンが少ないドライバーの9度を選んでいます。全体的に見て9度台がスゴく多い印象ですね。

尾関彩美悠選手はスリクソン「ZXi TR」の8度で、西村優菜選手は「パラダイム ◆◆◆ S」の9度。ヨネックスの「EZONE GT Type-S」を使う岩井姉妹は2人とも9度です。この理由は、スイング特性として、ややインサイドからアッパー気味に入れて飛距離を稼ぐという、女子プロの一つのトレンドによるものです。ロフトがありすぎると球が上がりすぎてしまうんでしょう。

一方で、ロフトは立っていますが、他の女子プロとは異なる選手が2人。昨シーズンに8勝を挙げてポイントランク1位に輝いた竹田麗央選手は8度。「日本女子オープン」を見たら、けっこうフェード系の球を打っていましたが、それでも球を浮かせられる技術があります。古江彩佳選手も「B3 MAX」で9.5度というのも分かります。重心が深めで球が上がりやすいヘッドだからです。

アイアンのシャフトがアンダースペック気味!?

アマチュアの目線ではハード目のドライバーを使っている女子プロですが、アイアンのシャフトを見ると逆転現象が起きていました。みんな普通にカーボンや「NSプロ 950GH」のSRとか「NSプロ ゼロス8」などを好んで使っています。この“ギャップ”が面白いというのが、一番の印象です。

例えば桑木志帆選手はドライバーに「ディアマナ BB」の53Sを入れてます。53Sを挿す男子のアマチュアならば、アイアンのシャフトは「DG 105」とか、せめて「NSプロ 950GH neo」とかを入れたくなると思いますが、彼女は「NSプロ 850GH」のS。総じて、70~80g台のアイアンシャフトが散見されました。逆にNSプロ 950GHなどは少なくて、より軽量なNSプロ 850GHが多いですね。そこが「なんでだろう?」と思って見ていました。

ギアのチカラで硬く速いグリーンに挑む

その理由として考えられるのは「日本女子オープン」でもそうでしたが、グリーンが硬めですごく速いこと。通常営業のコースでは考えられないようなコンディションのグリーンに対しては、ボールの高さがある程度ないと止められない、という部分がどうしてもあると思います。彼女たちが厳しいトレーニングをしているとはいえ、やっぱり道具のチカラを使って、アイアンではけっこう高い球を打つようなスイングのイメージになってくるのではないでしょうか。そのときに、例えばシャフトが「DG 105」などでは球を浮かしきれない、ということかもしれません。

菊地絵理香選手のドライバーには「SPEEDER NX BLACK」の5Sが入っていますが、このシャフトを使う男性アマチュアはけっこういると思うんです。でもその人が、アイアンで「ゼロス7」を使うことはほぼないでしょう。

パーオン率を高めるためのシャフト選び

川崎春花選手はクラブをいろいろ変えて(アイアンのシャフトを)シンカグラファイトの「レクシア」に戻すと優勝する、という流れがあります。グリーンを狙うセカンドショットで、同シャフトだときちんと高さが出せるのでしょう。もちろん、女子ツアーのトッププレーヤーたちは、スイングのコントロールがとんでもなく上手い人たちです。でも、男子ほどパワーがあるわけではないので、シャフトなどを工夫して「球の高さ」を出しているのかなと思いました。

中には竹田麗央選手のように「NSプロ モーダス3 ツアー120」のSという、男子顔負けのシャフトを使っている選手もいるにはいます。でも彼女はドライバーが飛ぶし、身長が166cmあるから。身長が150cm台でモーダスの120とかを使っている選手は、あまりいないんじゃないでしょうか。穴井詩選手も165cmです。身長がこれくらいあるから、けっこうしっかり目のシャフトを入れてもいいのかな、という感じはしますね。

次回も引き続き、女子プロのクラブについて深掘りしていきましょう。

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石井良介(いしい・りょうすけ) プロフィール

1981年生まれ、神奈川県出身。PGAティーチングプロの資格を持ち、トラックマンを使った最新理論やデータに基づくレッスンが好評。YouTubeチャンネル「試打ラボしだるTV」も大人気。

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