ヘッド計測値通りの「高弾道低スピン」にドライバー職人・野仲茂も驚いた「G440」比較試打/外ブラ1W比較研究(ピン編)
25年モデルの大手外ブラドライバーが出そろい、どれを購入するか迷っている読者も多いと思われる。本特集では5メーカーの新作ドライバーを、ドライバー職人・野仲茂がコースでテストし、弾道計測器でデータを測定した。商品購入の際に参考になれば幸いだ。3回目は、ピンの「G440」シリーズの3モデルを打った。
今回のテストは、中調子でクセがない藤倉コンポジット「SPEEDER NX VIOLET(スピーダー エヌエックス バイオレット)」(60・X、長さは45インチ)を挿し、ボールはタイトリスト「PRO V1x」で統一。本コースで球を打ち、弾道追尾式の計測器「トラックマン」でデータを測った。シャフトとボールをテスター・野仲茂が実際に使う仕様にできるだけ合わせ、ヘッド特性の違いをあぶり出した。
●テーラーメイド「Qi35」編
●キャロウェイ「ELYTE」編
「PINGがブレた?」という刺激的なキャッチが話題になった、ピンの2025年モデル「G440」シリーズのドライバー。お馴染みの「MAX」「SFT」「LST」とタイプ違いの3モデルを用意し、飛び方や振り心地の違いを研究する。試打クラブの表示ロフトはいずれも9度。
“つかまるけどつかまりすぎない”に進化したSFT
球のつかまりを重視した“ドローバイアスの先駆け”と言える「SFT」から打ってもらった。「構えてみると、平べったくてヘッドの後方が出っ張ったカタチ。リストを使わず押し込むように打ちたくなるヘッドですね。ドローバイアス系ということですが、フェースはかぶっていなくて真っすぐに見えます」(野仲茂、以下同)
マイドライバーに比べるとスピンが入り、キャリーが6yd伸びた。そして、フェードヒッターの野仲が打つとほぼストレートになったことからも、球のつかまりがいいことが分かる。「ロフトが9度で、ロフトが寝て見えるわけではないのに球が上がりました。そして、ちょうどいいつかまり感。打感が柔らかくて、ボールをしっかり押し込める手ごたえがします」
ヘッドの実測データによると、見た目が大きく見えるわりに重心距離が長くはなく(39.5mm)、ライ角がアップライト(61.5度)で重心角が大きい(30.7度)ことがつかまりのポイントとして挙げられるが、フェースアングルがオープン(-3.4度)で左に行くイメージが消してある。これまでの「SFT」にはとにかくつかまるイメージがあったが、新作の「SFT」は野仲が言う「ちょうどいいつかまり感」になって、つかまりすぎが抑えられた。
ヘッド実測値の詳細はこちらの記事を参照
「G440」ドライバーを一斉計測 3機種とも他に類を見ない“超・低重心”
推進力がある中弾道でキャリー&ランを伸ばしたMAX
続いては、スタンダードモデルの「MAX」だ。3モデルの中ではMOIが最も大きくて(5418 g・cm2)、大手外ブラ25年モデルの中でも“最深クラス”(48.4mm)の重心深度を誇る。それでいて、ライ角がアップライト(61.5度)で重心角が大きくて(31.4度)、球がつかまる要素もある。「ヘッドは確かにデカいけど、カタチがキレイだからイヤじゃないし、むしろ据わりがよくて構えやすいです。構えてみると、ライ角がアップライトに感じません」
弾道データを見ると、スピンを抑えた中弾道のうっすらフェードで、マイドライバーよりもキャリーが10yd、トータルで8yd上回った。しかも、30yd近くのロングラン。
「『SFT』よりもしっかりした打感です。中弾道の強い球で、試合でもこのまま使えそう。球が高いと左右に曲がるリスクが高まりますが、このモデルは曲がらずに着地してくれてランも出た。ボクはこういう弾道を求めているんです」
LSTは“パワーフェード”で280ydオーバー!
「G440」シリーズの3機種で、野仲が最も飛ばしたモデルが「LST」だ。こちらは中弾道の適正スピンで、落ち際でスッと右に切れるパワーフェード。キャリーで250yd、トータルが280ydに達した。「振りやすい、コレはいいですね! 『MAX』と見た目があまり変わりませんが、少し小さく見えて操作しやすい印象があるし、実際にそうでした。硬くなく柔らかすぎず、ちょうどよく心地いい打感。こちらもリストターンをして打つのではなく、グッと押し込むように厚く当てるイメージで力強く飛ばせます」
ロースピンを謳う「LST」だが、思いのほか「MAX」と同じように重心深度がかなり深い(48.1mm)。もう一つ意外だったのは、球が左に行かないイメージがある「LST」でも、重心角が大きくて(31.8度)FPが小さい(14.3mm)という、つかまりの要素が入っていること。
フェースアングルがオープン(-3.5度)、ヘッド重量が重め(202.3g)、リアルロフト角が9度より立っている(8.8度)といった、アスリートが好むポイントを押さえつつ、従来よりも敷居が下がって“アマチュアも打てるLST”になったようだ。
ドライバーが苦手な人も、コースで“結果”が出しやすい
「『G440』シリーズは、ピンらしく弾道の直進性が高くて安心感があります。打つときに手先を使いづらくて余計な小細工ができないぶん、ドライバーが苦手な人でもコースで“結果”を出しやすいクラブです。どのモデルも、リストターンをして打つのではなく、押し込むイメージで打つほうがいい結果につながるでしょう」
「前作を超えなければ新作は出さない」というポリシーのもと、あえてモデルチェンジのサイクルを決めていないピン。
満を持してローンチした新作の「G440」シリーズは3モデルとも、他メーカーのドライバーに比べて重心深度がかなり深い(MAX/48.4mm、SFT/47.0mm、LST/48.1mm)、そして、重心高さが低い(MAX/25.7mm、SFT/25.0mm、LST/25.2mm)。このリアルな“深・低重心”により、高打ち出し&低スピンの飛ぶ弾道が打ちやすくなったことが、進化のポイントと言える。それによって「10K」に比べればMOIはやや収まったかもしれないが、3モデルのいずれも5000 g・cm2台の大MOIはキープしている。まさに「飛んで曲がらない」を追求したドライバーと言って差し支えない。
取材協力:横浜カントリークラブ