さすが「ゼクシオ」と「ミズノ」 日本人に寄り添う“重心距離と重心深度の妙”/26ドライバー研究#5
26年モデルの人気ドライバーの性格や特性を、重心データからあぶり出す企画。クラブデザイナーでありジューシー株式会社を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼し、それぞれのモデルの特徴を分析しつつメーカーの意図を読み取ってもらう。5回目は日本の2ブランド(ゼクシオ、ミズノ)からローンチされたドライバー4モデルだ。
#1 ドライバーのトレンドは“扱いやすさ”へ 「大MOI時代」は終焉か…
#2 「大MOIでやさしい」から「つかまりやすさで飛ばす」時代へ
#3 「Qi4D」を一斉計測 “コアモデル”の調整幅にワクワクする!
#4 「クアンタム」を一斉計測 重心距離「短」傾向で“つかまえて飛ばす”時代に
重心距離を長くしすぎない「ゼクシオ」の使い心地
四半世紀に及ぶロングセラーモデルであり、ジャパンブランドの雄として君臨する「ゼクシオ」(ダンロップ)。14代目を迎えた「ゼクシオ」ブランドのドライバーについて、「とくに『ゼクシオ14』は、ずっと変わらない“ゼクシオの使い心地”を備えた重心性能です。そこはさすがだな、と言わざるを得ません」と松吉氏は感想を述べた。
日本のゴルファーに長く愛されている「ゼクシオ」だが、その“使い心地”の良さは重心データのどこから読み取れるのか。
「重心距離を長くし過ぎないところです。『ゼクシオ14』(39.3mm)と『ゼクシオ14+』(40.1mm)ともに、重心距離が40mm前後と標準的で、伝統的にそこから外れていません。ゴルフ歴が長い日本のゴルファーには『フェースをちょっとコントロールしたい、ちょっとコネたい』という感覚を持つ人が多いもの。そういうニーズに応えるために“取り回し”の良さを備えています」
意図的につかまえやすい、オートマチックにつかまりやすい
「ゼクシオ」というブランドはスライスに悩むアマチュアに長らく人気が高い。
「“ちょっとつかまる”という性能を必ず維持しています。(2モデルともに)重心距離が40mm前後に対して、重心角が30度以上と大きいので、オートマチックにヘッドが返って球がつかまりやすい。しかも、フェースが遅れたときは自分の意思で戻せるような“最後の微調整”というか“自分の気持ち”も少し入れられる。そういうバランスが程よく取れているところが『ゼクシオ』の特徴です」
先の女子ツアー「NTTドコモビジネスレディス」では、菅沼菜々が「ゼクシオ14+」のドライバーを使い、平均263yd(計測ホールの平均)を飛ばして優勝した。「ゼクシオ」がアマチュアだけでなく、球をつかまえる技術がある女子プロからも支持されているワケとは?
「とくに若い世代で活躍している女子プロは、ゴルフを始めたときからそういう性能のクラブで技術を習得しています。球がつかまりやすいクラブでも、それをどう振っていくかをジュニア時代から身につけている選手は苦もなく使えるはず。そういう意味では、この性能を上手くスイングに組み込める選手と、そうでない選手で差が出るかもしれません。
また、女子プロの場合は、体格(身長)に対してドライバーが長めになるケースがほとんど。それによってやや振り遅れやすいことを考えると、つかまり感があるクラブでも受け入れやすいのではないでしょうか」
王道の「14」、米国モデルのトレンドに寄せた「14+」
「ゼクシオ」のドライバーは、2000年のデビュー当時(初代モデル)から2モデル展開をしている。とくに11代目(2019年)を迎えると、ノーマルモデルに対して「エックス」という、振れる若者を意識したモデルがラインアップ。その「エックス」が3代続き、14代目は「+」になった。
「過去のモデルもそうでしたが、『ゼクシオ14』と『ゼクシオ14+』の2モデルは“ゼクシオらしさ”をストレートに守っている『14』と、味つけを少し米国モデルに寄せている『14+』という違いがあります。ただし、その違いが極端ではありません。『ゼクシオ』のベストバランスは崩していないし『ゼクシオ』じゃないクラブにはなっていない。その辺りが絶妙なんです」
それでは、松吉氏が指摘する“米国モデル風の味つけ”とはどういうことか?
「『ゼクシオ14+』のほうが、重心がちょっと長く、ちょっと深いです。それから、ヘッド重量がちょっと重い。そういうちょっとした違いが必ずあり、打つ人にその違いを感じてもらえるようにできています」
コントロールしやすくミスへの寛容性も備わるミズノ
重心距離を抑えて“取り回し”を良くすることにおいて、ミズノの「JPX ONE」シリーズはより際立っている。「JPX ONE」(37.7mm)と「JPX ONE SELECT」(37.6mm)はともに重心距離が37mm台と、今回計測した18モデルの中でも短いヘッドに分類される。
「そこが日本のゴルファーたちのちょっとローテーションを入れる、インパクトで“気持ち”を入れることのやりやすさにつながります。とりわけミズノのクラブが好きな人は、アイアンも含めてそういう部分を求めているのではないでしょうか」
松吉氏はそれぞれの特徴について、淀みなく解説を続ける。
「『JPX ONE』は重心がやや深くて(41.4mm)、ヘッドがクイックに反応しながらも、少し“上”を向いて球を上げてくれる挙動を示します。しかも、重心角が大きめ(31度)で球がつかまりやすい。重心距離が短くても、ヘッド重量が重め(200.7g)でMOIが大きい(5143g・cm2)ので、ミスヒットの寛容性もある。全体として『扱いやすい、やさしい』と感じるようなバランスになっていて、日本の市場にとても合う性能だと思います」
「JPX ONE」の実測データをさらに深掘りすると、表示ロフトが10.5度に対して、リアルロフトが9.9度と立っている。初速が出て飛ばしやすい、という要素も入っているようだ。「しっかり飛ぶ、つかまりやすい、打点ブレをカバーしてくれる、という万能な印象ですね」
コントロールしやすいのに、球がつかまりすぎない
球がつかまりすぎて左に行くのがイヤな人は「JPX ONE SELECT」がその悩みを解決してくれるという。つかまりやすい「JPX ONE」と、明確なすみ分けができている。
「重心距離が短め(37.6mm)で、重心深度がそこまで深くありません(38.1mm)。この2つの数値が近いと、ヘッドが素直に動いて扱いやすく感じます。また、重心角が抑えられていて(26.7度)、つかまりはニュートラル。『JPX ONE』に比べればMOIは少し小さくなっています(4663g・cm2)が、ヘッド体積の10倍あるので十分。かなり扱いやすくてバランスが整っています。他のメーカーの“取り回し”が良くないモデルに違和感を覚えている人たちにとって、このモデルは叩きにいける気持ち良さがあるため『こういうクラブを待っていたんだ』と感じるのではないでしょうか」
ミズノのドライバーを振り返って、松吉氏はこう締める。「『JPX ONE』シリーズは、日本のミズノが好きな人が求めている性能にピタッとハマります。それぞれのモデルのターゲットに、しっかりとフォーカスされていますね」
次回(#6)はピンの26年モデル(追加モデル)にスポットを当てる。
文:新井田聡
クラブ写真:小林司
取材・編集:中島俊介