タイトリスト「GTS」シリーズを一斉計測 数字が物語る“寛容性の塩梅” /26ドライバー研究#8
2026年モデルのドライバーを重心データによって解剖する企画。クラブデザイナーでジューシー(株)を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼して、それぞれのモデルの特性を丸裸にしてもらう。8回目は大注目、タイトリストの3モデルだ。
前作よりも打点がバラついたときの寛容性がUPした
PGAツアーにおいて、7シーズン連続でドライバーの使用率No.1となっているタイトリスト。従来はアスリートが好む顔や打感の良さ、操作性に長けているイメージが強かったが、前作の「GT」シリーズからはより“飛ぶタイトリスト”を印象づけた。満を持してこの6月にローンチされた最新作のドライバー「GTS」シリーズ(GTS2、GTS3、GTS4)は「基本的にどのモデルも“飛ばせる性能”がさらにアップしたと思います」と松吉氏は話す。
GTSシリーズ全体の傾向についてこう続ける。
「前作のGTシリーズに比べると、新作の『GTS』シリーズはヘッドの慣性モーメント(MOI)が確実に大きくなりました。新しい材料でボディを作ることなどで、見た目のキレイさと取り回しの良さをキープしたまま、MOIを少しでも大きくして前作よりもミスヒット時の寛容性を高めています」(松吉氏、以下同)
操作性と寛容性のバランスが絶妙な「GTS2」
「『GTS2』は前作(GT2)に比べて、重心深度が少し浅くなって(40.9㎜→39.7㎜)、重心距離がちょっと短くなっています(39.8㎜→38.0㎜)。これによって、ヘッドを意図的に動かしやすくなったし、スピン量を減らせる。ヘッドが勝手に“上を向く”とか“つかまる”という動きが抑えられて、プレーヤーの意思をよりダイレクトに伝えて飛ばしやすくなりました。
上手い人が打てば『こういうモデルが一番、飛ばしやすいよね』という感覚になります。競技志向ゴルファーの中でユーザー層が広がった、という意味で、寛容性が高まったと言えるのではないでしょうか」
聞きようによっては、ヘッドの動きが過敏になったり、打点ミスに対してシビアになったりしたのか? と捉えられるかもしれないが、そうではない。このモデルは「2」シリーズならではのバランスの良さが備わっているという。
「決して昔っぽい感じの、ただ取り回しが良くてスゴいシャープな性能になったわけではありません。重心距離に比べて重心深度のほうが、数字が少し大きいぶん難しさはあまり感じなくて、やさしさのイメージがありながら取り回しが良い。シリーズの中でも“ちょっとやさしい”と感じられる、バランスが整ったモデルです。
ヘッドのMOI(4797g・cm2)が必要十分にあり、ミスへの寛容性もあります。また、前作よりも重心高さがやや上がり(29.0㎜→30.4㎜)、スピン量が少し増えるようになりました。とくにアマチュアのHSだと、今はそこまで低スピンにする必要はありません。スピンが少し入るほうが弾道の飛び方が安定するし、キャリーが出しやすくなります」
このGTS2はノーマルの設定で、ソールの前方(11g)と後方(5g)にウエートが挿入されている。2つのウエートを入れ替えた“深重心設定”(前方5g、後方11g)のデータも計測&分析してもらった。
「重心深度が深くなり(42.7㎜)、MOIが大きくなって5000g・cm2を超えました(5056g・cm2)。このデータだと、一般のアマチュアも普通にやさしく打てるでしょう。GTS2はウエートを交換することで、飛ばす方向の設定(前方11g、後方5g)も、今風のやさしく打てる方向のチューニング(前方5g、後方11g)もできますね」
アスリートがぶっ叩いて飛ばせる「GTS3」
続いて「GTS3」。こちらには、より明確なターゲットゴルファーが浮かび上がる。
「重心距離が長め(40.5㎜)で球が左に行きづらくて、重心深度が浅い(36.0㎜)のでスピンが少ない。しかも、重心角が小さい(21.7度)から、ヘッドが勝手に返ることはありません。左を怖がらずに、安心して速く振っていけるし叩きにいける。フェードが打ちやすいイメージもあります」
前作の「GT3」に比べても、重心距離が長くなったぶん(38.5㎜→40.5㎜)、フェースのターンが抑えられるということだ。
「だからこそ、HSが速くて球をつかまえにいく人にとっては、その抵抗感が心地よく感じるかもしれません。と同時に、前作よりもヘッドのMOIが大きくなりました(4309→4521g・cm2)。MOIが4600g・cm2近くあれば、多少は芯を外しても弾道はそれほど変わりません。そこを踏まえても、HSが速い人がキモチ良く叩けるでしょう」
GTS3の重心データを見ながら、松吉氏はこうも指摘する。キーワードは「ロフト」だ。
「こういう低スピンドライバーのハイロフトって、実はアマチュアにオススメだったりするんです。打ち出しの高さは出るけど、球が吹け上がらないのでキモチ良く打てるもの。HSがそんなに速くない人でもGTS3の11度など大きめのロフトを選ぶと、飛ぶ可能性は出てきます」
スピンを減らせる、弾道を打ち分けられる「GTS4」
そのGTS3とは正反対の性格を持つのが「GTS4」だと言う。
「GTS4は重心距離が短くて(37.8㎜)、重心深度が浅い(34.6㎜)ので、ヘッドがクイックに動きます。しかも、3モデルの中ではヘッドのMOIが小さめ(4365g・cm2)だから、ミートできる人や打点をコントロールできる人というように、ターゲットが絞られてくるでしょう。打点ミスへの寛容性が高いとは言えませんが、前作の『GT4』に比べるとヘッド体積が大きくなり(442cc→453cc)、ヘッドのMOIも大きくなりました(4167→4365g・cm2)。前作よりは少しやさしくなったと言えます」
今どきの大MOIヘッドとは逆を行くようなデータだが、もちろんこのモデルがハマる人はいる。
「今風のドライバーを打つと、ヘッドが戻り切らずにスライスしてしまう、どうしても球が右へ行っちゃう人は、こういうモデルだとフェースをコントロールしやすくて戻りやすく、確実に球をつかまえられます。
もうひとつ言えるのは、ヘッドのMOIが小さいということは、ギア効果が生じやすいということ。つまり、フェースの上目に当ててスピンを減らす、トウ・ヒール側に当ててドロー・フェードを打ち分ける、ということがやりやすいんです。GTS4は、フェースがかなり高くて重心高さが低く(27.1㎜)、スイートスポットより上のエリア(重心高2)がかなり広い(26.6㎜)ので、低スピンの弾道が打ちやすい。自分で何でもやりたい人にも向いてますね」
GTSシリーズの中で比較すると、PGAツアーでGTS4をバッグに入れるプレーヤーが少なめなのは、どういう理由があるのか?
「現代のゴルフでは、フィジカルを鍛えて自分の出力を上げて飛ばしているし、ドライバーで“多少は曲がっても遠くに飛ばすほうが有利”というのが、ここ数年のスイングトレンドです。MOIが小さめで球が曲がりやすい(曲げやすい)と、そういうスイングがちょっとやりづらいのかもしれません。とはいえ、ゴルフ歴が長くてフェースをローテーションしながら振っていきたい人には、スゴく使いやすいと思います。ひとつの選択肢としてGTS4をラインアップしているのでしょう」
使える人が幅広くなったバランス型のGTS2、ツアープロに支持されてきた「3」シリーズの進化版GTS3、コントロール性と低スピン性能に長けたGTS4と、プロを始めとする競技ゴルファーを中心に、多くの人たちに必要とされるモデルをそろえたGTSシリーズ。今後は「GTS1」がリストインするのか? いずれにしても、世界のツアーで活躍するドライバーであることは間違いない。
文:新井田聡
クラブ写真:野村知也
取材・編集:中島俊介
松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール
ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。