クラブは“顔”が命! 2023秋の最新アイアンを見比べ隊
安定派? 精悍派? 注目最新12本をズラリ
ドライバー編に続き王道を突き進む13代目モデルから、人気の“イマドキ飛び系”と称されるマッスル系中空まで、話題作が出そろった今秋のアイアン市場。ミスに対する寛容性の高さを連想させる安定感のある顔立ちか、操作性と所有感を満たす精悍なモデルか――あなたの推しはどっち!? クラブ設計家・松尾好員氏の解説付きで、最新モデル12本を並べてみた。
ボールを包み込むUTライクな「13」
ダンロップ「ゼクシオ 13 アイアン」は、フェースが非常に長く、高さもあるため、全体的に大型サイズのアイアンといえます。リーディングエッジは超ストレート、丸みを帯びたトップライン、しかも強いグースネックということで、ボールを包み込むイメージが強く持てます。トップラインもソール幅も非常に厚く、ユーティリティ的な印象を抱かせるフォルムといえます。
「13」を踏襲しながら独自路線の「エックス」
ダンロップ「ゼクシオ エックス アイアン」は、「ゼクシオ 13」と同様にストレートなリーディングエッジと丸みのあるトップライン、強めのグースネックでボールを包み込む印象を抱かせています。ただ、「13」と比べてフェース長は短くV型ソールのため、イメージ的には同社の「スリクソン ZX5 Mk II アイアン」に少し近い印象。ヒール側の高さに比べてトウ側の高さが高く、ややアップライト感が出ている点も特徴のひとつです。
スイープスイングに合うツアー系「VD/R」
ヤマハ「RMX VD/R アイアン」は、フェースの長さは短く小ぶりなサイズ感、ストレートネックでスクエア感のあるツアーモデル。ややフラットなライ角なので、つかまりすぎないイメージが持てます。リーディングエッジは、ストレート系でトップラインに丸みがあり、ボールを包み込む“国産のプロモデル”の雰囲気が出ています。ツアーモデルの割にバウンス角が小さいので、入射角が緩やかなスイープなスイングに合うでしょう。
「R」と同系統でひと回り大きい「VD/M」
ヤマハ「RMX VD/M アイアン」は、「VD/R」よりひと回り大きいですが、短めのフェース長とストレートネックでスクエア感があり、ややフラットなライ角という共通点は多いです。ストレート系のリーディングエッジと丸みのあるトップラインで、ボールを包み込むイメージも同様。バウンス角は比較的に大きめで、ダウンブロー軌道での抜けの良さを発揮しそうです。
米国市場も視野に入れた顔立ち「241」
ミズノ「ミズノプロ 241 アイアン」は、フェースの長さが短いマッスルバック。超ストレートネックでスクエア感があり、ややフラットなライ角でつかまりすぎないイメージが持てます。リーディングエッジは丸く、ストレート系のトップラインでフェースに逃げ感が得られる点は、国内だけでなく米国マーケットも意識した作りに感じます。悪いライでもボールにコンタクトしやすい幅狭ソールに、比較的に寝ているロフト角(7Iで34度)はボールを上げやすく、スピンも入ってグリーンに止めやすい設定です。
「241」より若干グース感を持たせた「243」
ミズノ「ミズノプロ 243 アイアン」は、同シリーズ「241」と比べて少しフェースは長く、高さもやや高いですが、ツアーモデルらしい小ぶりな形状となっています。「241」と比べてややグース感がありつつ、ストレートネックでスクエア感のあるタイプ。ややフラットなライ角でつかまりすぎないイメージが持て、丸みのあるリーディングエッジとストレート系のトップラインは「241」と共通しています。ソール幅は「245」より広くなっている点も特徴です。
つかまり具合の強弱バランス設計「245」
ミズノ「ミズノプロ 245 アイアン」は、「243」と比べてフェースは少し長いですが、一般的なプロモデルと同じフェース長です。「241」「243」よりトウ側の高さが少し高く、ややアップライト感があり、他2モデルよりグース感が出ているのでつかまりの良さをイメージできます。その一方、トップラインはよりストレートで、フェース面にはやや逃げ感を出していることでつかまり過ぎにも配慮。やさしさと精悍さの適度なバランスを図った作りといえます。
安心感も抱ける米国モデル「P790」
テーラーメイド「P790 アイアン」は、比較的オーソドックスな形状でやや厚めのトップラインが特徴です。フェースはやや長く、ストレートネックでスクエア感はありますが、少しグース感を得られるネック形状。米国モデルらしくかなり丸みのあるリーディングエッジとストレートなトップラインで、ボールをつかまえすぎないイメージが湧く逃げ感のあるフェースが、海外モデルの特色を表しています。
ツアー系だけどやさしいイメージもある「APEX PRO」
キャロウェイ「APEX PRO アイアン」は、ツアーモデルらしくフェースは短めの小ぶりなヘッドですが、丸みのあるリーディングエッジとトウ側の形状で、全体的に丸みを持たせて少しグース感のあるネックで、やさしさも演出しています。ヒール側に比べてトウ側に高さがあり、アップライトなライ角もつかまりの良さをイメージできます。バウンス角が大きく、ダウンブローでのソールの抜けの良さも大きな特徴です。
洋芝の環境で生まれた米国産ツアーモデル「T100」
タイトリスト「T100 アイアン」は、ツアーモデルらしくフェースは短く、超ストレートネックでスクエア感のある顔立ちです。米国モデルらしくアップライトなライ角で、丸みのあるリーディングエッジとストレートなトップライン、フェースに逃げ感を持たせています。悪いライでもボールにコンタクトしやすい幅狭ソールですが、バウンス角はしっかり存在していて、ダウンブローなスイングにマッチしているといえます。
「100」との共通点も相違点もアリ「T150」
タイトリスト「T150 アイアン」は、「T100」同様にツアー系らしく短いフェースと超ストレートネックで、スクエア感を出している点が特徴。アップライトなライ角で、丸いリーディングエッジとストレートなトップラインで、逃げ感を演出しています。バウンス角も標準的でターフを取るスイングに向いている点も同じ。「T100」との違いは、少しフェースが長く、ソール幅が少し広い点とロフト角が2度立っているところです。
フェース長・グース感・ソール幅が増「T200」
タイトリスト「T200 アイアン」は、「T150」と比べてややフェースが長く、トウ側の高さが少し高いため、ライ角のアップライト感をより演出しています。ストレートネックでスクエア感はありますが、「T150」に比べて少しグース感があり、ソール幅も広くなっています。丸いリーディングエッジとストレートなトップラインで逃げ感も演出。他2モデルとは違ってバウンス角がないため、入射角の緩やかなスイープスイングが対象になると思います。
28度から34度まで… ストロングロフト順
自分好みの“顔”は見つかっただろうか? 最後は今回取りあげた全12モデルの7番アイアンのロフト角を小さい順(ストロング順)で並べてみた。小さいものはロフトが立っていて飛距離を重視したモデル、大きいものはロフトが寝ていて高さを出しやすいモデルと大別できる。アイアンを選ぶ際の参考にしてみてはいかがだろうか。
■ 松尾好員(まつお・よしかず) プロフィール
神戸大学工学部卒業後、住友ゴム(ダンロップ)に入社し、クラブの設計開発に携わる。世界4大メジャーで最も多くの選手にクラブを提供した日本人クラブデザイナーとして知られる。現在ジャイロスポーツを主宰。