純正シャフトvsカスタムシャフト 比較試打で見えた意外な事実とは 今さら聞けない最新シャフト事情【後編】
大手クラブメーカーが、ヘッドとシャフトをセット(完成品)として販売する「純正シャフト」が徐々に変化し、現在はカスタムシャフトとの違いが分かりにくくなっている。その現状をお伝えした前回、“同じ名称なのに中身が違う”問題が発生していることを紹介した。今回は、同じヘッドで純正とカスタムを挿し替えて打ち比べを行い、その差を検証してみた。(後編/全2回)
まずは別ネームで検証!“純正頼りない説”を払拭
純正シャフトとカスタムシャフトに、実際どれほど差があるのか――。多くのツアープロからも支持を集めるクラブフィッター・吉田智(よしだ・さとし)氏の協力のもと、最新ヘッドに純正とカスタムを装着し、GCクワッドで弾道データを比較した。
まずは別ネーム同士で検証。テーラーメイド「Qi4D ドライバー」(10.5度)に、純正“標準”シャフト「REAX 60 Low Rotation White」と、吉田氏が実際に使用するアフターマーケット用「TENSEI Pro White 1K」(ともにS)を装着。HS45m/sで7球平均を計測した。
価格差は、「REAX 60 Low Rotation White」は中古で1万~1万5000円前後(※編集部調べ・単体販売は中古のみ)に対し、「TENSEI Pro White 1K」は2021年モデルながら新品で3万5000~4万4000円、中古でも約2万円前後。さらに今回は、吉田氏が使い慣れたマイシャフトという条件もあり、カスタム側に有利な比較となるのだが…。
結果は、カスタムのほうが初速が1m/s速く、スピン量は37rpm減、打ち出し角は0.8度高く、キャリー&総距離ともに上回った。ただ、この数値的な差について吉田氏は、「ほとんど誤差の範囲。弾道自体はほぼ同等です」と分析する。
「純正が吹け上がって弱々しい球筋で、決して劣っているわけではありません。カスタムのほうが、若干小さい範囲にボールが収まってくれる差だと思います。特に今作『Qi4D』シリーズは、同社の意気込みを感じるラインアップで、赤・青・白の3系統でスイング中のヘッドローテーション量に応じて選べます。これまでにあった“純正は頼りない”という概念を払拭する性能と構成といえるでしょう」
同じネームで検証! 弾道は微差だが特性が全く違う
続いて、キャロウェイ「QUANTUM ◆◆◆ ドライバー」(9度)で比較。シャフトは純正「ATHLEMAX 50」と、同じネーミングの純正「TENSEI GRAY 60 for Callaway」とカスタム「TENSEI Pro White 1K」という3本で比較した。
「ATHLEMAX 50」は同社「QUANTUM」シリーズに採用された純正シャフトで、クセのないしなり感でタイミングが合わせやすく、幅広いゴルファー向けに設計されたモデル。「TENSEI GRAY 60 for Callaway」は、純正としてはややしっかりとした硬めの設定で、程よいしなり量でクセのない挙動(中調子)が特徴。一方の「TENSEI Pro White 1K」は元調子で、手元側にしなやかな「1Kクロス」を採用しており、ハードヒッターが叩きにいっても当たり負けしない仕様と、特性はかなり異なる。
結果は、「ATHLEMAX 50」がスピン量で唯一2000rpm台と比較的に多い数字となったものの、打ち出し角は他より低く(13.7度)、キャリーでは266ydと他2本と比べても同等、総距離でも「TENSEI GRAY 60」と同じ287ydという数字に。カスタム「TENSEI Pro White 1K」は、キャリー267yd・総距離293ydと、やはり他2本と比べると飛距離性能の高さを数字の面でも実証した。価格差や前提となる特性の違いを考えると、当然ともいえる結果になった。
「他2本は、60g台に比べて軽量な『ATHLEMAX 50』でも不利を感じず、素直なしなりで幅広く対応してくれます。一方、『TENSEI GRAY 60』は手元と先端が硬く、中間がしなる設計でテンポの速いスイング向き。ラインアップとして、明確にターゲットを振り分けられる“味付け”が施されています。気になる同じ名称『TENSEI』同士の違いですが、実際に打ってみて、数字以上の特性の違いを感じられました」
『TENSEI』同士で、具体的に何が違ったのか――。
「『TENSEI Pro White 1K』は、先端剛性が非常に高く、ヘッド挙動を安定させやすい元調子のハードヒッター向けシャフトです。『1Kクロス』という超高密度カーボン織物素材を採用しており、手元側のしなやかな振り心地を残しながら、高いエネルギー伝達性能を両立。低スピンの強弾道を打ちやすく、左右のブレも抑えやすい特徴があります。一方の中調子『TENSEI GRAY 60』とは、コンセプトや設計思想そのものが異なる印象で、もはや“別もの”と呼べるほど差を感じました」
「同じ『TENSEI』だからといって、同じ特性と捉えるのはやはり非常に危険です」と、改めてその違いを実感していた。
「純正が下、カスタムが上」という通説を疑え! 選ぶなら“試打”ありき
では、ユーザーはどう選べばいいのか。吉田氏の結論はシンプル。「試打して合うものを選ぶ」――これに尽きるようだ。
カスタムシャフトは特定のターゲットに最適化された“クセ”を持つため、試打なしでの購入はリスクが高い。一方で、純正は幅広い層に対応する設計のため、試打環境が限られる場合には有効な選択肢となる。「重要なのは、ヘッドスピードやスイングタイプを変えながら、複数条件で打ち比べることです。合っていない道具に自分を合わせるのではなく、合う道具を基準にすること。近年は可変スリーブの普及により、シャフトを何種類も使い回すことも可能になりました。自分に合った一本を見つけることは、長期的な上達にも直結します」
「純正シャフトは、カスタムシャフトに比べて安価だから品質が劣る」という言説は根強い。だが、それはあくまで開発段階でのテスター(メーカー側が用意した販売前の試打者)の基準に基づいたものに過ぎない。「全てのゴルファーにとって最適とは限らないのが現実です。だからこそユーザー自身が情報を見極め、試打で計測した数値を通じて判断する必要があります。そしてメディアや販売側には、その判断材料を正確に伝える役割が求められています」
純正シャフトとカスタムシャフトの境界は、ここ10年で確実に曖昧になった。だが、それは同時に、選択肢が広がったことでもある。大切なのは、名称やイメージに惑わされず、自分に合った一本を見つけること。ロゴやデザイン、見た目だけで判断せず、実際に数値や打感で判断することが重要だ。(編集部・内田佳)
吉田智(よしだ・さとし) プロフィール
「PREMIUM GOLF STUDIO(プレミアムゴルフスタジオ)代官山」を主催。長年積み重ねた経験と的確な分析力で、成田美寿々をはじめ多くのトッププロから厚い信頼を得るクラブフィッター。カリスマフィッターMr.吉田としてYouTube活動をメインに、数多くのゴルフ誌や関連のテレビ番組にも出演中。