女子プロの誰もが一度は通る不朽の名作「スピーダー」 “569からNXまで”中古で歴史を読み解く
藤倉コンポジットの「スピーダー」はリシャフト文化の先駆けとなったシリーズのひとつだ。国内女子ツアーを席巻し、現在は使用率ナンバーワンを誇る。その輝かしい歴史と現代の「NX」シリーズへと繋がる進化の系譜をギアマニアが紐解いた。
リシャフトを文化に変えた初代スピーダーの衝撃
かつて、ゴルフクラブのシャフトは“ついているもの”を、そのまま使うのが常識だった。その既成概念を打ち破り、「シャフトを替えれば、飛距離は伸びる」という夢を具現化したのが、1990年代後半に登場した「スピーダー」シリーズである。
「スピーダー 757」、「569」、「661」は、その圧倒的な弾き感でプロ・アマを問わず旋風を巻き起こした。三菱ケミカルの「ディアマナ」が2004年に登場し「青マナ」「白マナ」のトレンドを作る数年前にブランド地位を確立していたのだ。ただ、クセのない「757」に比べ、谷口徹らが愛した「661」(660TR)は、スピーダーの名の通り先端が走るシャフトで、ボール初速は出しやすいが、チーピンに悩んでいた筆者は苦労した。
進化の系譜:エボリューションからNXへの「分類学」
スピーダーの歴史は「エボリューション(EVO)時代」と現在の「NX時代」に大きく分けられる。2013年に登場した「モトーレ スピーダー」(こちらを初代とする認識もある)を挟み、2014年に「スピーダー エボリューション」がリリースされた。“エボ”の愛称で親しまれたこのシリーズはモデル名の数字によって明確にキャラクターが分けられた。
奇数モデル(I、III、V、VII)はシャフト先端が鋭く走り、スピーダーの真骨頂であるつかまりと高弾道をアシストする設計。偶数モデル(II、IV、VI)は手元から中間にかけてのしなりを重視。左へのミスを恐れるハードヒッター向けに開発された。
「スピーダー NX」は2021年にトルクで制御する新次元として登場した。従来のキックポイントの概念に加え、VTC(バリアブル・トルク・コア)技術を導入した。先端と手元のトルクを緻密に制御することで、これまでにない面の安定感と振り抜きやすさを両立。これが現代の国内女子ツアーにおける圧倒的な使用率へと繋がっている。
第1世代がニュートラルな「ブルー」、スピーダーらしい走りが特徴の「グリーン」、手元と先端が動く「ブラック」。第2世代としてブルーをリニューアルした「バイオレット」、グリーンの後継「ゴールド」とそれぞれカラーがモデル名になっている。
男子ツアーで人気はベンタス
同社の「ベンタス」シリーズは男子選手に人気が高い。米国チームが開発しているモデルで、フレックスもハードで、重量帯も表記された数字以上に感じられるものがある。
一方のスピーダーは表記と実際の重量に違和感がなく、40g台からラインアップしているので、対象ゴルファーが幅広い。硬さも表記通りと言って良い。アマチュアゴルファーや女子ツアー選手との相性が良いだろう。ヘッドスピードが30m/s後半~40m/s前半で、左へのミスに悩んでいないなら、スピーダーとの相性が良い。
中古市場で狙うべき“お宝スピーダー”考察
中古リシャフト市場において、スピーダーは常に流通の主役で人気がある。すでに中古でしか手に入らない惜しい名品も多いので紹介しよう。「スピーダー エボリューション IV(エボ4)」(2017年)は歴代エボシリーズの中で「最も完成度が高い」と評される名作である。中元調子特有の叩ける安心感があり、ニュートラルで扱いやすい。申ジエ(韓国)が長い間、替えられなかった。1万円前後で見つかる。
「スピーダー NXグリーン」は国内女子ツアーで圧倒的な人気を誇った。初速UPが狙える。2万円前後が相場となっている。また、グリーンのスピード感に手元のしなり感をプラスしたのが最新作の人気モデル「NXゴールド」で、3万円前後で手に入る。
通常のスピーダーシリーズとは別に、短尺ドライバー専用として開発された「スピーダーSLK TypeD」は「シャフトを短くしてミート率を上げ、平均飛距離を伸ばす」という思想が流れる。流行りのミニドライバーにピッタリ。ただし、バランスが出やすい設計となっているので、ヘッドのウエート調整が必要になる場合もある。
「SLK」シリーズだけでなく、本流と違う手元調子で先端がしっかりした「TR」シリーズなど、レアだがターゲットがハッキリしたシャフトもおもしろい。
スピーダーシリーズの初代は超・個性的なシャフトだったが、今ではスイングタイプに寄り添った扱いやすいシャフトに進化した。特性を見極め、自分にピッタリのモデルを見つけることで飛距離アップが狙えるはずだ。過去の筆者のように、スピーダーにトラウマがある人がいるなら、もう一度試打してほしい。(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。