米スポーツ用品王手ナイキは1998年にゴルフボール、2002年にゴルフクラブの製造販売に進出。タイガー・ウッズをはじめとしたスター選手を擁してプロゴルフ界でも一大ブランドになった。16年にシューズ、アパレル事業に特化するためクラブ、ボール製造からは撤退したが、新興メーカーらしい発想から数々の名器を残した。今回は中古市場で未だに人気があるナイキのクラブにスポットを当てる。

エポックメイキングなウッド類は今…

ウッズやロリー・マキロイ、ブルックス・ケプカも契約し使用していたナイキのクラブ。進化のスピードが速いドライバーにおいても、独特の配色やテクノロジーで、いまも先進性を感じさせるものがある。「VAPOR PRO （ヴェイパー プロ） ドライバー」（2015年）や「ヴェイパー フライ ドライバー」（2016年）は現在でも通用する低スピンでミスヒットに強い寛容性もある。

ナイキのドライバー「ヴェイパー フライ」（写真左）と「ヴェイパー プロ」（写真右）

特に「ヴェイパー フレックス 440」（2016年）はチタンのカップフェースに、軽量素材のレジンをコンポジットしているモデル。重心深度も調整できる機能もある。なかなかレアだが2万円前後から見つけることができる。

ナイキはフェアウェイウッドづくりにも長けていた。「T40」、「T40 ツアー」（2005年）はソールに40gのタングステンを配した超低重心のフェアウェイウッド。飛距離性能は今でも通用するが、一般的なアマチュアではスピン量が少なすぎて球が上がらないというリスクもある。逆に言えば、球が高すぎる人には好都合？ どちらも見つかれば1万円もしない。特にウッズが使用していた「T40 ツアー」の5W（19度）は、今でもオークションサイトなどで高価で取引されている。

「ヴェイパー スピード リミテッド」（2014年）は木下稜介が昨シーズンまで使用していた“替えられない”フェアウェイウッドだった。ヘッドサイズも大きくて使い勝手が良く、相場も1万円前後から。スコッティ・シェフラーが昨シーズン前半まで使っていたのが「ヴェイパー プロ リミテッド」（2011年）で、松山英樹も使ったことがある。こちらは5000円前後からが相場だ。

“遠藤製作所”謹製アイアンは名器ぞろい

見つけたら買いか！？「VR フォージド プロ コンボ」アイアン

ナイキの軟鉄鍛造アイアンはほとんどが遠藤製作所で作られていた（VRマッスルバック、CCIアイアン、ヴェイパー プロ アイアンなどの例外もある）。クオリティが高く、多くの著名プロが使用していたので性能は間違いないと言えるだろう。特に2002年に発売された「ツアーブレード マッスルバック アイアン」などは形状も美しく、シンプルなバックフェースも相まって所有感をくすぐる逸品だ。

しかし番手によって溝規制に合格していないものが含まれており、現在は使用がためらわれる。ロフト角も7番で37度とかなり寝ている点も気になるが、コレクションには良いかもしれない。「VR フォージド プロ コンボ」（2013年）は仕上げも美しく、深いキャビティで難しすぎないのでオススメ。6本セットで2万円台から見つかる可能性がある。

タイガー“ナイキ契約時代”の一押しクラブは？

TWのマークが入る「ヴェイパー スピード TW」

ウッズが使用していたクラブで一押しは、「VR プロ ブレード アイアン」（2010年）。こちらは溝規制をクリアしている軟鉄鍛造アイアン。美しい形状で、これぞタイガーモデルという雰囲気がある。すでにコレクターズアイテムとなっており、程度の良いものは5万円以上の値がついている。

ウッドだと「ヴェイパー SPEED（スピード） TW」（2015年）ではないだろうか？ “TW”のモデル名だけでグッと来るものがある。ヘッドサイズが少し小ぶりの420ccで洋梨形状とウッズの好みが存分に反映されている。かなりのハードヒッター仕様となっているので、最低でもヘッドスピード45m/sは欲しい。かなりレアで3万円前後からと、割高感は否めない。

ブルックス・ケプカ、トニー・フィナウが替えられない3番アイアン「ヴェイパー フライプロ」(2016年)は中空アイアン。飛距離性能も寛容性も特筆すべき点はないのだが、彼らにとって扱いやすいのだろう。修羅場を一緒にくぐってきた信頼感は他人では言い尽くせない。5番からPWまでの6本セットで販売され、3番はオプションということで、数はとても少なく、オークションサイトやフリマサイトでは、US仕様で5万円以上の値が付いている。

トニー・フィナウが未だに使う3番アイアン「ヴェイパーフライプロ」

ナイキには魅力的な商品が数多くあった。撤退は残念でならないが、懐古趣味ではなく、性能的にもまだまだ中古では魅力的なものもある。中古ショップの片隅にひっそりと歴史的名器が残っているかもしれない。こまめにチェックしてみてはいかがだろう。（文・田島基晴）