中古で「10K」をめぐる旅 実は昔からあった?「SQ」もひょっとして…
2024年春のゴルフ市場は「10K」に沸いた。10K=10000(1万)、この数字は慣性モーメントの大きさを指している。世はクラブにやさしさをもたらした“大・高慣性モーメント時代”。中古ショップで注目のドライバーを探した。
そもそも「慣性モーメント」って、なんだっけ
慣性モーメントは物体の「回転のしにくさ」、「回転の止めにくさ」を決める量のこと。大きければ大きいほど、回しにくいし、止めにくい。MOI(moment of inertia)と呼ばれ、単位はゴルフクラブにおいて、グラム平方センチメートル(g・cm2)で表されることが多い。10K=10000は、そのヘッドの慣性モーメントが1万g・cm2に到達した、という意味だ。
ちなみにルールでは最大で左右慣性モーメントが5900g・cm2と決められている。1万というのは左右の慣性モーメント値に、上下の慣性モーメント値を足したもの。値が大きければ大きいほど、ヘッドの余計な回転と動きが抑えられるため、理論的には芯に当てやすい。また、ダンプカーが多少の抵抗には負けないのと同じで、芯を外してもヘッドがブレにくく、ミスが軽減される。
とはいえデメリットも忘れないでほしい。ダンプカーが小回りが利かないように、インパクト直前でヘッドの動きや向きを変えるのは難しい。オートマチックな動きに向いていて、操作はしにくい。また、高慣性モーメントのヘッドは大きく、重く、重量を回転軸から遠くに配置しているので、重心がフェースから遠ざかり、深くなる。インパクト時にフェースが上を向いたり、開きやすかったりする傾向がある。その重さから、非力な人は振りにくさも覚えるだろう。
話題の最新「10K」は中古でおいくら?
“10K市場”をリードした、今春発売のテーラーメイド「Qi10 MAX ドライバー」は5万円台から、ピン「G430 MAX 10K ドライバー」(2024年)は6万円台からが相場だ。
ちなみに軽量モデルのピン「G430 MAX 10K HLドライバー」は合計慣性モーメントが1万g・cm2以下だったため、発売後にG430 MAX 10Kとの異例の無償交換プログラムが実施された。しかしながら、ヘッド後方のウエートを軽くしてあるため振りやすく、G430 MAX 10Kよりも重心深度が浅めで、低スピン弾道が打ちやすい。密かにオススメしたい逸品だ。6万円前半から見つかる。
過去モデルにも実は「10K」があったのでは
テーラーメイドとピンは奇しくも同時期に10Kをアピールしたが、過去のモデルにも同様の高慣性モーメントを実現したモデルがあったのではないか?と筆者は推測している。以前は“上下の慣性モーメント”という分析視点がなかったからだ。
例えば、2008年にナイキがルール限界値の5900まで攻めた「サスクワッチ SUMO スクエア 5900」(2008 年)や、2018年「G400 MAX」は、ぜひとも計測してみたい。
サスクワッチは5000円前後で、オークションサイトなどで手に入る。打球音があまりに甲高く、使用禁止にしたゴルフ練習場もあった。G400 MAXは中古市場ではレアで3万円台後半。2019年に発売された「G410 PLUS」や2020年「G425 MAX」シリーズより高価が付いている。
「10K」超えまであと少し 惜しいモデルは多分このあたり
ブリヂストンの2024年モデル「B3 MAX」(2024年)はロフト角によって性格がかなり違うのも特徴だ。MAXのやさしさを追求した10.5度のモデルは、関係者によると「9000は余裕で超えている」ともっぱらの噂。高慣性モーメントのドライバーとしては珍しく重心距離も短めで、ヘッド重量も200g以下と軽い。スライサーも安心だ。5万円後半から。
ヤマハ「RMX 220」(2019年)も高い慣性モーメントを誇る。少しグースがあり、球をつかまえやすい。1万円台前半で10K気分が味わえるだろう。早くから高慣性モーメントを売りにしていた先述のピン「G410PLUS」や「G425MAX」もかなり惜しいはず。どちらも2万円台後半で手に入れたい。
10Kドライバーはミスに強いと言えるが、必ずしも“大台”に到達しなくても、十分助けになるはず。まずは中古で挑戦してみるのはどうだろう。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。