大改造を遂げたメダイナNo.3 全ぼうを現地レポート/プレジデンツカップ プレビュー(前編)
2年に一度の世界選抜と米国選抜の対抗戦「ザ・プレジデンツカップ」は9月24日からイリノイ州シカゴのメダイナCC No.3で行われる。大規模な改修を行った名門コースを訪れ、その改修の狙い、そして約50日後に迫るビッグイベントの展望を探った。(取材・構成/服部謙二郎)
「メダイナの奇跡」その再来なるか…
前回2024年大会は世界選抜のホーム、カナダのモントリオールで開催された。ことしは米国選抜がホームチームとなる。
メダイナといえば、2012年のライダーカップを覚えている読者の方もいるかもしれない。米国選抜が圧倒的優勢だった最終日の12試合を、欧州選抜が8勝、1敗、3分で大逆転し、「Miracle at Medinah(メダイナの奇跡)」と呼ばれた大会だ。
6月初旬、メディアに向けて新しく生まれ変わった「No.3」が公開され、その全貌が明らかになった。メディアデーで見聞きした情報をお届けしたい。
市街地からほど近い名門中の名門コース
まずはコースのおさらいをしておこう。メダイナCCはイリノイ州シカゴのダウンタウンから約40kmほど、米国のハブ空港であるシカゴ・オヘア空港からも車で30分と近く、名門ゴルフ場の中では比較的アクセスの良いゴルフ場といえるだろう。
1924年設立のメンバーシップクラブ。コースにはスイミングプール、テニスコートがある。ゴルフ場がクローズになる冬場は、射撃場で大会も行われ、クロスカントリーなどもできるという。メンバーの社交場として100年以上の歴史を刻んできた。
No.1~3まで3コースあり、設計家トム・ベンドローが1→2→3の順に建設していった。中でも、過去に「全米オープン」3回、「全米プロ」2回、「ライダーカップ」を1回行うなど、数々のメジャーの舞台となっているNo.3が最も有名だ。2019年にはPGAツアー「BMW選手権」が行われ、松山英樹が2日目にコースレコード「63」を出した(その翌日にジャスティン・トーマスに「61」を出されたが…)。世界選抜の主力選手である松山が相性のいいコースというのは好材料だが、このたび大改修を遂げたあとに松山が同じ印象で回れるのだろうか。
コースを案内してくれたメダイナの日本人メンバーである岸岡慎一郎氏が、3コースの違いを説明してくれた。
「No.1はもともと林間コースで、戦略性の高いコースでした。2014年にトム・ドークが改修を行い、約800本の木が伐採されて、広々としたコースに生まれ変わりました」
「No.2は最も伝統的なオールドスタイルコースで、子供や女性も気軽に回れるなどファミリー向けでもあります。2016年にリース・ジョーンズが改修して、ジュニアや初心者から上級者まで楽しめるように、最大7つのティが用意されています」
「No.3は言わずと知れたチャンピオンコースです。全長7600ヤードある圧倒的な距離と、カディジャ池が絡むホールなど、雄大な自然との闘いが求められます」
ちなみに岸岡氏はホスピタリティコミッティ担当で、約2年半前からこの大会に向けての準備を進めてきたという。大会まで2カ月を切り、大会に関わるメンバーやスタッフたちの仕事も、まさに最終コーナーを回ったところだった。
クラブハウスはまるで…世界遺産?
コースのゲートをくぐり、車を少し走らせると、オリエンタル様式の巨大なクラブハウスが視界に飛び込んできた。独特なアーチやレンガ造り、縞模様の意匠は、スペイン南部のアンダルシア地方の世界遺産「メスキータ」を彷彿とさせた。訪れたのは雨上がりの夕刻。西日に照らされたクラブハウスは、異様な存在感を放っていた。
正面には広大な芝生エリアがあり、その先には大会の舞台となるNo.3コースが横たわる。大改修を終えたコースでは、整備用カートや観戦用スタンドを造る作業員のカートが忙しく行き交い、プレジデンツカップ開幕へ向けた最終準備が着々と進められていた。
クラブハウスに足を踏み入れると、そこは外観と同じ世界観がそのまま続いていた。静謐な空気に包まれた館内は、どこかモスクを思わせる趣があった。照明も必要以上に明るくなく、厳かな空気を漂わせている。高い天井と窓から差し込む自然光が開放感を演出し、館内には瀟洒な雰囲気があった。中央には歴代プレジデンツカップの写真やトロフィが並び、その歴史の重みを静かに語りかけているようだった。
レストランやバー、シガールームのほか、ポーカーゲームを楽しむ部屋まで備えられている。いわゆる名門クラブらしい空間で、壁には過去に開催された大会の写真やイラストが数多く飾られていた。一つひとつに目を向けていると、クラブが歩んできた100年超の歴史が伝わってくる。まもなく始まるプレジデンツカップもまた、その歴史に刻まれる新たな1ページになるのだろう。
「久常涼選手も昨年ここでプレーしていましたよ」と岸岡氏は情報を教えてくれた。現在、世界選抜入りの当落線上にいる久常はランキング11位で、松山英樹(同3位)以外の日本人メンバー入りに期待がかかる。世界選抜キャプテンのジェフ・オギルビー(オーストラリア)に招かれる形で、何人かの候補者がシカゴに呼ばれ、そして視察ラウンドを行ったという。期待の若手を呼び寄せたのだろう。その話を聞くだけでも期待が高まってきた。
生まれ変わった「NO.3」ってどんなコース?
さて、今回の主題である「NO.3」は、2024年にOCMという設計グループによってリデザインされた。
OCMの“O”はジェフ・オギルビー(オーストラリア)のこと(CとMも設計者の頭文字)で、つまり世界選抜のキャプテンはコース改造にも関わっているのだ。生まれ変わったコースに熟知しているということは、それだけでもだいぶ世界選抜にとってアドバンテージがあるのではないかと思ってしまう。
「約2500万ドル(約40億円)規模で土台から完全につくり直しました」と岸岡氏は言う。2022年の秋に始まった大改修は、約1年かけて行われ、翌年10月までにすべての成形と芝生の敷設が完了したという。もともと鬱そうとした木々が多くあったというコースは、「開放的で日々違う顔をもつようなダイナミックなコース」をコンセプトに、樹木の伐採や従来の灌漑設備の撤去が行われた。樹木がなくなりすっきりしたことで、コースの起伏もはっきりとし、その小高い丘を流れるように風が通るようになった。いたるところにヒースが群生し、林間コースからまさに開放感のあるダイナミックなコースへと変ぼうを遂げていた。
「全く違うコースになりましたよね。昔は林の中に入るとボールを探すのも大変でしたから」と、メンバー歴の長い岸岡氏は振り返る。他にも、グリーンは形から大幅に見直され、バンカーの数も70前後から100近くに増えたという。もちろんバンカーの形状にも見直しが入り、視覚的にもハザードとしてゴルファーを迷わすには十分なものになった。
「40マイル超(約60キロ)の排水システムを新導入してNo.3の敷地自体を拡張しました。18ホール全体でグリーンは87%、ティイングエリアは68%、フェアウェイは157%、バンカーは116%に面積が広がっています。一方で、セミラフ区域は71%減少しています」
岸岡氏が言及したように、フェアウェイは従来の約1.5倍に広がっている。実際、ティイングエリアに立つと、見た目にもかなり広々としている。だが、決してコースがやさしくなったわけではない。「グリーンを狙う際の角度を考えると、フェアウェイのどちら側にボールを置くかが重要になります。以前の平均幅25ヤードでは、そこまで戦略性を持たせることができませんでした」と岸岡氏。フェアウェイを広げたのは、「フェアウェイのどっちに打っていくか」とプレーヤーに選択肢を与えるため。マッチプレーの駆け引きを考えると、むしろティショットは以前にも増して難しくなったととらえていいだろう。
さらに1~3番ホール(通常の5~7番)には木製の境界フェンスを新設。アウトオブバウンズ(OB)を戦略的ハザードとして取り入れた。例えば1番ホール(505yd・パー5)ではティイングエリアからグリーンサイドまで左サイドに境界線が続いている。
「左サイドぎりぎりを攻められれば、グリーンは狙いやすくなります。ただ、安全策をとって右へ逃げると、今度はグリーン右サイドのガードバンカー越えを強いられる。しかも、そのバンカーは深さも角度も砂質も以前とは全く違います」。まさにリスクとリワードが共存する設計だ。
通常営業の5番ホールをスタートホールとして使用するなど、ルーティングも変更する。「この発想には驚かされました。使用するティによって攻略法が大きく変わり、プレーヤーの想像力が試されます」。まさにマッチプレーならではの駆け引きが、スタート直後から繰り広げられるわけだ。生まれ変わったメダイナの個性を象徴するホールと言えそうだ。
生まれ変わったコースを回った印象は?
新しく生まれ変わったコースを何度かプレーした岸岡氏は「超モンスターコースに変ぼうしました」と言い、具体的なポイントを記してくれた。
・ティショットを林側に打ち込んだ場合、浅めだったとしても出すのは至難の業。開放感は増したが決してスコアはよくならない。ショットの引き出しや実力があればあるほど多彩なプレー選択肢が持てるイメージ
・バンカー縁のアイブロー(まつ毛)と称するフェスキューがかなりやっかい。つかまったらボールは出せず、「バンカー方面に打っちゃった」では済まされない細部にわたる精度が求められる
・ラフの代わりに敷かれるヒースはショートアイアンでもボールは出ない
・ガードバンカーもフェアウェイバンカーも以前より傾斜がきつく、ほとんどのバンカーは「出すだけ」
・ウオーターハザードは単なる池ではなく「ウィンドトンネル」としての役割も。風の通り道となり当日の風によりホールが大きく変貌
・グリーンの名手でもアンジュレーションが読みづらくなった
・高い想像力と戦略性の両方が求められる。以前はドライバーやフェアウェイウッド、ミドルアイアン、ウェッジだけで良かったのが、トッププロでもゴルフバックの中の全てのクラブを高いレベルで使用しないとスコアが出ないイメージ
・今まではドローヒッター向けの昔ながらのコースだったが、大改修後はドロー、フェード両方のショットの打ち分けが明確に求められる
生まれ変わったメダイナで、世界のトップ選手同士はどのような戦いを見せるのか。後編では大会エグゼクティブプロデューサーへのインタビューをお届けしたい。