スリクソン「ZXi RKT」を一斉計測 女子プロが“TR”を好む理由が見えた/26ドライバー研究#10

東五反田ギア総研
ZXi RKTのドライバー4種を一斉計測!

2026年モデルのドライバーを、重心データやスペックによって分析する企画。クラブデザイナーでジューシー(株)を主宰する松吉宗之氏にヘッドの計測を依頼して、各モデルの特性をあぶり出す。10回目はダンロップの「スリクソン ZXi RKT(ロケット)」シリーズの4モデルだ。

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計測した項目とその説明はこちら

高バランスの中に飛ばせる要素を付加したコアモデル

この秋にお目見えしたスリクソンの新作ドライバーZXi RKTシリーズ。4モデルのヘッドを計測した松吉氏はこう述べる。

「4モデルそれぞれに形状や性能の違いがハッキリと出ています。キャラクターが異なるラインアップなので選びやすいでしょう」(松吉氏、以下同)

さっそくスタンダードモデル「ZXi RKT」から見ると「良いバランスを保ちながらちゃんと飛ばせるような、やや競技ゴルファー向けの性能を出していると感じられます」と切り出した。

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表示ロフトは10.5度

「というのも、慣性モーメント(MOI)が5000g・cm2を超えるまで大きくはなくて(4913g・cm2)、重心深度がそんなに深くはありません(40.9mm)。インパクトロフトやスピン量が増えないようにして、飛ぶ方向に寄せています。重心距離(43.2mm)はフェースローテーションを抑えた打ち方に合っていて、それに対して重心深度のほうがやや抑えられているので、強く振ってもスピン量がそんなに増えないでしょう。とはいえMOIは必要十分にあるので、ミスヒットに対する寛容性も備わっています」

本シリーズのドライバーは、フェース上部のフェースアングルを段階的にオープンにして、フェース上部のトウ側に当たったときの過度なフックを抑えつつ、ヒールからトウ側へ段階的にロフトを大きくして、過度な低スピン化を防いでいる。

「そうした形状の工夫により、構えた際にフェースが開いて見えるような、ボールがつかまりすぎない安心感があります。そのため、しっかり振っていきたくなる雰囲気があります。ゴルフに真剣に取り組んでいる人や、ここ数年で競技志向としてゴルフを始めた若いゴルファーなど、左へのミスを過度に気にすることなく、気持ち良く振り抜いていけるでしょう」

ほどよくつかまりミスヒットに寛容なMAX

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表示ロフトは10.5度

ZXi RKTシリーズの中で、最もやさしい位置づけのモデル「MAX」についてはこう述べる。

「重心深度がかなり深く(44.4mm)、対して重心距離は長くありません(40.7mm)。そして、重心角が大きめ(29.4度)で、球がつかまりやすいけどつかまりすぎるわけでもない。このあたりはアスリート系ブランドスリクソンならではですね」

見た目が大きくて、構えたときの安心感があるヘッドだ。

「4モデルの中で、ヘッドのMOIが最も大きく(5329g・cm2)、スイートエリアが広いです。ヘッド体積(457.0cc)を維持しながらMOIを大きくするために、ヘッド形状をシャローにして投影面積が大きくなったのでしょう。

ゴルフを頑張っていて上昇志向がある人たちで、打点がバラつく人やHSが遅めの人、球がつかまらない人も打てる、性能をわりとやさしいほうに振ったモデルですね」

低スピンで飛ばせるLS、2つのウエートを入れ替えると?

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LSで戦う松山英樹

PGAツアーで松山英樹が実戦投入している「LS」は「モデル名の通りロースピンにするために、重心深度を浅くすること(36.0mm)を徹底しています」とキッパリ。また、浅重心のほかにも、ロースピン化の要素が見られるという。

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表示ロフトは10.5度

「左右のMOIは4300g・cm2をクリアすれば大きな差はありませんが、4498g・cm2に抑えられています。それに伴って上下のMOIも抑えられるので、スイートスポットより上のエリア(重心高2)に当てたとき、ギア効果が生じてより低スピンになりやすい。

しかもディープフェースなので、重心高2(有効打点距離)が長く(25.0mm)、そこで当てやすくなっています。まさに“低スピンの弾道を打つためのクラブ”と言って差し支えありません。このモデルのロフト10.5度だとHSが45m/s以上あったほうがいいですが、それでより飛ばしたいという人は良さそうです」

この「LS」はソールの前後に2つのチューニングウエートが入り、ノーマル設定だとフロント側に10g、バック側に4g。松吉氏には前後を入れ替えてバック側を重くした“深重心設定”のLSヘッドも計測してもらった。

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表示ロフトは10.5度

「重心深度が“やや浅い”くらいで収まり(39.0mm)、その反面MOIが少し大きくなりました(4734g・cm2)。この設定だとHSが速くなくてもそれなりにやさしく打てるでしょう。ノーマル設定の場合は、HSが遅いとスピンレスになり球がドロップしてしまう可能性があります」

ウエート交換により“HSが速くない人が使えるLS”にもなるのだ。

ヘッドを走らせやすくてイメージした球が打ちやすいTR

シリーズの中でも、ノーマル設定のLSと「TR」は、とくにプロや上級者に好まれるモデルだ。その中でもLSはHSが速い人が飛ばせる、TRは操作性や取り回しが良い、というすみ分けがあるという。そして、ヘッドがやや小ぶりなTRは、新旧モデルを含めて女子プロに人気があるようだが、その理由とは?

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菅楓華はTRを好んで使う

「男子プロに比べれば筋量などが少ない女子プロは、できるだけシャフトの性能を生かすことが大事だと思います。重心が深すぎてフェースが上を向くようなヘッドよりも、重心が浅めで自分の意志通りにヘッドを戻して(ターンして)加速できるほうが、自分のポテンシャルを限界まで出したい女子プロには好まれるのではないでしょうか。そして、重心が浅めのほうがシャフトのしなり・戻りを生かしやすいです。自分の好きなシャフトが決まっているとか、目指しているスイングをする中で、もう少し飛んでほしい、楽に打ちたい、という人が試してみるといいでしょう」

「TR」のヘッド特性について深掘りしよう。

「サイズはやや小さめ(449.0cc)ですが、重心の深度(38.6mm)と距離(39.3mm)の数値が近くバランスが取れていて、ヘッドが素直な動きをするし、シャフトのしなりも生かせます。また、MOIが十分なレベルまではありつつもやや抑えられていて(4492g・cm2)、芯を外したときにギア効果が生じて弾道コントロールのしやすさもアリ。球を曲げたい、スピンを減らしたい、高さを抑えたい、など意図した球が打ちやすいです。

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表示ロフトは10.5度

自分でヘッドを動かしたい人はターンしやすくて球がつかまりやすく感じるでしょうし、コンパクトなほうがミートに集中できる人もいるでしょう。もともと小ぶりなヘッドが好きなベテランもいますし、前述したような女子プロにも好まれるのではないでしょうか」

RKTは“形状”と“重心”で違いを出した

4モデルの実測データから、球のつかまり具合も見えてきた。

「球がつかまる順に言うと、『MAX』がややつかまる、『TR』がニュートラル、『スタンダードモデル』がややつかまらない、『LS』がつかまらない、という感じで、深重心設定の『LS』は、ややつかまらないくらいでしょう」

最後に「ZXi RKT」シリーズの4モデル(表示ロフトは全て10.5度)を計測して、一つの傾向が見られたという。

「実測データを見ると、ロフト角やライ角、FP(フェースプログレッション)は4モデルほぼ同じでした。その上でヘッド形状や重心位置を変え、モデルごとの性能差をしっかり作り分けています。同じシリーズ内でスペックをそろえながら個性を出しているのは、日本メーカーらしいですね。性能差を出すためにロフト角やライ角を変えるモデルも少なくありませんから」

スペック変更に頼らず、ヘッド設計によってモデルごとの個性を際立たせる。そのあたりに、メーカーのこだわりと高い技術力がうかがえた。この新作がドライバーの市場を、ツアーのティイングエリアを賑やかしそうだ。

文:新井田聡
クラブ写真:野村知也
取材・編集:中島俊介

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松吉宗之(まつよし むねゆき) プロフィール

ジューシー株式会社の代表取締役。ゴルフクラブメーカーにて、クラブの設計開発に20年以上携わる。2018年にジューシー株式会社を設立。自社製品だけでなく、OEMでの設計も行う。3D CADを用いたデジタル設計をいち早く導入し、数値に裏付けられた革新的な性能のクラブを多数開発。その傍ら、膨大な数のクラブヘッドを自身で測定し、ゴルフクラブの性能や製法の進化を独自に研究し続けている。

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