「MP」シリーズはワールドワイドモデルらしく、国内メーカーにしてはバウンス角が大きめなのが特徴

ミズノの鍛造アイアンの歴史は古く、最初のモデルが誕生したのは1933年のこと。1980年からは「ミズノプロ MS」シリーズが登場し、国内ツアーを皮切りに日本国内で広く愛された。「MP」シリーズは94年頃から海外で発売が始まり、PGAツアーで人気を博したことで世界的に大ヒットを記録。日本では2001年に販売が開始され、2016年まで続いた。2017年からは再び「ミズノプロ」シリーズとして展開されている。「MP」シリーズは名器も多いが、意外と中古価格が手頃なものも多い。今回は歴代モデルを詳しく探ってみよう。

ミズノ軟鉄鍛造アイアンの輝かしい歴史

ミズノの軟鉄鍛造アイアンは、世界中のアスリートを勝利に導いてきた。特に「マスターズ」においては、1988年のサンディ・ライル（スコットランド）、89年、90年、96年のニック・ファルド（イングランド）、そしてタイガー・ウッズが97年に初優勝を果たしている。

川村昌弘がYahoo!オークションで購入した「MP-29 アイアン」の1番。かつてタイガー・ウッズも使用した

アマチュアの頃からミズノのアイアンを愛用していたウッズは、2～4番は「MP-29」、5番からPWは「MP-14」を使用していた。ちなみに、「MP-29」は、当時ミズノの看板プロであった中嶋常幸のシグネチャーモデル「TN-87」の海外向けモデル。2011年に米国、欧州両ツアーで賞金王のタイトルを獲得したルーク・ドナルド（イングランド）も愛用していた。「MP-29」と「MP-14」は国内でほとんど販売されていなかったため、中古での入手はかなり難しい。一方、「TN-87」は2015年に復刻版が発売されたこともあり、オリジナルモデルと復刻版ともに、オークションサイトやフリマサイトで見かけることが増えてきた。価格は消耗の程度に影響されるが、オリジナルモデルなら3万円～10万円程度、復刻版は10万～20万の間で取引されている。

MPシリーズの名器 マッスルバック編

同社の軟鉄鍛造と言えば、マッスルバックモデルをイメージする人が多いだろう。「MP」シリーズでは、「MP-33」（2001年）、「MP-37」（2003年）、「MP-32」（2004年）、「MP-67」（2006年）、「MP-68」（2009年）、「MP-69」（2011年）、「MP-4」（2013年）、「MP-5」（2015年）の計8モデルが登場した。

名器として名高い「MP-33」をモディファイして開発されたマッスルバックの「MP-4 アイアン」

なかでも筆者のおすすめは、これぞマッスルという形状の「MP-4」だ。弾道の高さを調整するために各番手でソール幅とブレードの厚さを変化させる「番手別肉厚フロー設計」を採用し、マッスルバックならではの打感の良さが特徴。中古ショップでは6本セットで2万5千円を切る価格で見つけることができる。ただし7番のロフト角が34度と昔ながらの設定のため、近年の飛び系アイアンのような飛距離は期待できない。

MPシリーズの名器 マッスルチタン編

「MP-59」からミスヒットに強くなった「MP-15 アイアン」。まだまだ程度の良いものが多い

「MP」シリーズは複合ヘッドも人気があった。なかでも軟鉄よりも比重の軽いチタンをバックフェースに圧入し、キャビティ並みのやさしさとマッスルの打感を狙ったモデルもシリーズ化されている。「MP-58」（2009年）、「MP-59」（2011年）、「MP-15」（2014年）と3モデルが作られたが、おすすめは「MP-15」。ロフト角が7番で32度と近年のアイアンに近く、マッスルバックと比べると、ミスヒットに強い点もうれしい。中古市場では6本セットで3万円前後からが相場だ。

MPシリーズの名器 意外とやさしいキャビティ編

100切りを達成して、長く使えるアイアンを探している人にもオススメできる「MP-55 アイアン」

硬派なイメージがある「MP」シリーズだが、アベレージクラスでも使いこなせるモデルも存在する。キャビティ構造の「MP-52」（2008年）、「MP-53」（2010年）「MP-54」（2013年）「MP-55」（2015年）、中空構造の「MP-H4」（2012年）、ソールを厚くした深重心設計の「MP-H5」（2014年）など。なかでも「MP-55」はシリーズの中で一番低重心で重心深度が深いため、ボールが上がりやすくミスヒットに強い。中古では6本セットで3万円から手に入れることができる。

中古アイアン購入の際は「アイアンの溝規制」を考慮

「MP」シリーズは2001年の「MP-33」から15年に渡って販売された。その間、ゴルフルールの変更があり、アイアンの溝にルール規制が行われている。2010年から段階的にルール規制が始まり、2024年1月1日から全てのゴルファーに適応される。2010年以前に発売されたアイアンでR＆Aの適合リストに掲載されていないモデルは使用できなくなる。そのため、中古アイアンを購入する際は発売年とリストで使用可能なモデルかどうかを確認するのをお忘れなく。

今回は「MP」シリーズとしては比較的新しいモデルを紹介したが、古いモデルにもまだまだ現役で活躍できる名器が多く存在する。発売当時はカスタムオーダーでの購入も可能だったため、シャフトの選択肢が多く、仕上げがカスタムされたレアな物も多くある。いつかはマッスルバック、いつかはミズノの軟鉄鍛造アイアンと思っていた人はこの機会にチェレンジしてみてはどうだろうか。（文・田島基晴）