意識すべきは「総重量よりヘッド重量」 軽量ドライバーの正解を中古で考える
軽量ドライバー(1W)と言うと、シニア向けやレディース用というイメージを抱きがち。一概に、「軽い=振りやすい」と思ってはならない。中古ショップにあるクラブの歴史をひも解き、軽量1Wのリアルを検証してみた。
1Wの総重量を知っていますか?
自分の1Wの総重量(ヘッド、シャフト、グリップの合計)を知るゴルファーは実際には少ない。
ピンの最新モデル「G440 MAX」の総重量は301g。ちなみに標準的な1Wは300g前後で、軽量モデルは270g前後が一般的だ。基本的に、軽量化はエネルギーロスにつながりやすい。軽いヘッドを振るとスピードは上がる半面、慣性モーメントが落ちる。ゴルファーがスイングできる範囲で重くするのは簡単だが、軽くするのには限界がある。
標準的な1Wのヘッド重量は200g前後。190gを切るとボールに当たり負けすると言われている。軽量1Wと言われるヘッドは195g前後が多い。純正シャフトは40g後半から50g前半が標準的。軽量化に最も貢献できるのは、実はグリップである。一般的なグリップ重量は50g前後だが、軽量グリップは30g、35gと重量を大幅に落とせるのだ。
しかしながら、クラブの中で一番長い1Wの遠心力を考えると、振った時に感じる重さを最も左右するのはヘッドの重量である。手元側にあるグリップの重量調整の効果は比較的少ない。クラブ全体の総重量よりも、ヘッドのわずかな重みの違いの方が、ヘッドスピードには影響しやすいからだ。筆者はクラブ総重量だけに注目して軽くするのには、異論を唱えたい。「軽量1Wと聞いていたのに、ヘッドが重くて振りにくい…」と感じたら、それはバランス過多になっている可能性が高い。一般的な重さのグリップに交換して、振りやすい重さを探るのも一つの手だ。
おすすめの軽量モデルは?
そういった事情を踏まえた上で、おすすめの軽量1Wを紹介しよう。まずはテーラーメイドのグローレシリーズだ。「Mグローレ」(2018年)はボールのつかまり、上がりやすさ、扱いやすさにそれぞれ優れている。1万円台中盤から見つかる。「SIM グローレ」(2020年)はMグローレの特長を引き継ぎつつ、つかまりを抑えたモデル。こちらも1万円台中盤で探したい。
キャロウェイ「ローグ ST MAX FAST」(2020年)はヘッドスピードが40m/s未満のゴルファーに合う。スピンも適量で、フックフェースに見えないのもポイントが高い。「原英莉花が2022年シーズンに使用した!」というウンチクも語れる…。
ヤマハ「インプレス ドライブスター」(2022年)は慣性モーメントが大きいのに構えやすいイケメンヘッド。軽量なのにしっかりとした純正シャフトも魅力だ。2万円台前半が相場だ。
そして、やはり軽量1Wの代表と言えるのはダンロップ(住友ゴム工業)のゼクシオだ。「ゼクシオ12」(2021年)は、手元にウエートを入れたことで、直前のモデルに比べて扱いやすさが戻った。2万円台中盤から見つかる。そもそも軽量グリップではなく、通常の重さのグリップにすれば、カウンターバランスにするウエートは不要のようにも思えるのだが…。
「LITE」、「HL」にもチャレンジすべき
1Wはヘッドを軽くするだけで、メリットが意外とある。大慣性モーメントが自慢の“10Kモデル”のヘッドは200gを超える。ミスヒットに強いと言われるが、重くて、ヘッドスピードが落ちるリスクがある。2008年、09年にナイキ「サスクワッチSUMO」などの高慣性1Wが流行した際もヘッドは重量アップの傾向にあったが、後に沈静化した。今回も10Kブームが去ったら、落ち着くのではないかと予想している。
ヘッドスピードの特別速くない人が、「10Kはミスに強いはず」と重いヘッドを無理して使う必要はない。重量問題はメーカーも十分に理解しており、テーラーメイドには「Qi10 MAX LITE」、「Qi35 MAX LITE」、ピンには「G430 HL MAX」、「G430 HL SFT」、「G430 MAX 10K HL」、「G440 HL MAX」、「G440 HL SFT」という、ヘッドがスタンダードモデルよりも10g近く軽い1Wが存在する。売り上げも徐々に上がっているという話だ。
LITEもHLも中古では数が少ないが、「シニア向け?」と敬遠せずに探して、試してほしい。できれば中古スリーブ付シャフトと組み合わせて、軽量でない好みのシャフトを選びたい。
「軽量1Wはまだ早い」と思っているゴルファーは多い。まずはヘッドの軽量化を考えてみてはいかがだろう。シャフトやグリップの再考はその次にしたい。中古ショップを利用すれば、試行錯誤もコスパ良くできるはずだ。ちなみに、自分の1Wのヘッド重量を知っている人には、筆者からギアマニア認定させていただきたい。(文・田島基晴)

田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。