マトリックス図

春の新作ドライバーをマトリックス図で比較 「国産MAX」と「海外MAX」明らかな違いとは

2024/05/01 15:00
2024年春に登場した7社17モデルのドライバーヘッド性能をマッピング

テーラーメイド「Qi10」とキャロウェイ「パラダイム Ai スモーク」の発売を皮切りに、国内外問わず話題作が続々と登場した今春のドライバー市場。“10K”をはじめとした高慣性モーメントヘッドから、飛距離と寛容性を別次元で両立したモデルまで、各社個性を打ち出すラインアップが出そろった。レッスンスクール「ゴルフテック」のコーチでクラブフィッティング事業を担当する三田貴史氏が、試打と計測データを元にマトリックス図を作成。7社17本の最新モデルのトレンドや各シリーズの傾向を解説する。

「国産MAX」と「海外MAX」 微妙に異なるつかまり具合

2024年春ドライバー17本の配置から、“国産MAX”と“海外MAX”の違いが見えてくる

縦軸はスピン量、横軸はつかまり具合で構成してもらった図を見ると、2021年秋から見受けられる、つかまり具合が強くスピン量の多いゾーン(左上)に集中した傾向は今期も継続していることが分かる。「以前から国産メーカーではバックスピン量が入りやすく、ボールが上がりやすい“やさしいクラブ”化の流れは強まっていましたが、ここへ来て海外勢もその流れに近づいているといえます」と三田氏。その特徴はテーラーメイド「Qi10 MAX ドライバー」、ピン「G430 MAX 10K ドライバー」が象徴するように、国産メーカーとはやや違った変化を遂げていることが、図を見ると把握できる。

「Qi10 MAX」「G430 MAX 10K」は、左上のボリュームゾーンから少し離れた場所(右寄り)に位置。三田氏は「海外ブランドの『MAX』の特徴として、スピン量はそこそこ入る半面、つかまり具合はそれほど高くないのが特徴ではないでしょうか。ミズノ『ST-MAX 230 ドライバー』、ブリヂストン『B3 MAX ドライバー』といった国産ブランドの『MAX』と比べるとつかまり具合は抑えめです」と、“国産MAX”と“海外MAX”の違いに言及する。

「いまや1ブランドから展開されるモデルは、3~4機種が当たり前になっています。その背景には、低スピン&高打ち出しの傾向が年々強まり、LS(ロースピン)モデルだけでなく、スタンダードモデルにも低スピン化が見受けられるようになりました。多くのアベレージゴルファーの受け皿が、『MAX』になりつつあるのです。慣性モーメントの安定感を手にしたいゴルファー、その中でもつかまり具合を求めるなら“国内MAX”、そこまで求めないなら“海外MAX”という、ひとつの基準ができると思います」

個性派キャロウェイと意外に正統派コブラ

国内外の「MAX違い」に注目が集まるなか、独自の路線を歩むメーカーもある。キャロウェイ「パラダイム Ai スモーク」だ。最も低スピン性能だった『パラダイム Ai スモーク ◆◆◆ ドライバー』はもちろん、他社でいうスタンダードモデル『パラダイム Ai スモーク MAX ドライバー』でさえ、図の中央に位置している。シリーズ全体を通して、スピン量が明らかに少ない。

「同社は、他社と比べても慣性モーメント値はそれほど高くなく、ミスヒットに対する寛容性は、ヘッド構造で図るテーラーメイド、ピンとは違った方向性を打ち出しているといえます。構造うんぬんよりも、『Ai スマートフェース』によるフェースによる進化が、ミスへの強さを発揮しているということでしょう」

キャロウェイの特徴と比べ、ややおとなしい雰囲気を示しているのがコブラ『ダークスピード』シリーズ。全モデルが横軸に対して中央に位置し、ニュートラルな設計であることが把握できる。

「ダークスピード」について三田氏は、「プロット図では可変ウエートは全て標準設定の状態で配置しました。ウエートを自由に動かし、理想の弾道を生み出すコンセプトを打ち出している同社の『ダークスピード』は、ネーミングのイメージに反し、意外とニュートラルな性格でした(笑)。『―MAX』のウエートポジションを、ヒール側と後方で入れ替えるだけで、ほぼ『―X』の位置まで下げることも可能です。購入後も調整できるメリットは、同シリーズの魅力かもしれません」と語る。

「LITE」「HL」「FAST」 一線を画す軽量モデルが増加

つかまりやすく、スピン量が多い軽量モデル3機種の違いとは?

今期のマトリックス図で、最後に注目したい存在は軽量モデルだ。「Qi10 MAX LITE ドライバー」「G430 MAX 10K HLドライバー」「パラダイム Ai スモーク MAX FAST ドライバー」は、いずれも総重量270g台と、ブリヂストン「B3 MAX ドライバー」「B3 MAX D ドライバー」や「オノフ ドライバー AKA」と比べて10~20g軽い。つかまり具合が強く、スピン量が多い同じゾーンではあるものの、その特性は少し傾向が異なるようだ。

「40~50g台の軽量シャフトがベーシックになりつつある昨今で、ヘッドも軽量モデルの需要が年々増えています。つかまりがよく、スピン量は比較的多いことが特徴ですが、単に軽めの設定だから全て同じと把握してしまうと、失敗するリスクは高いです。左上のゾーンの中でもつかまり具合が非常に高いもの、抑えめなものを振り分け、自身の傾向で左へのミスがどれほど多いかを鑑みながらモデルを選定するべきでしょう」

試打は「MAXから」に変化 最適モデルを見つけるには

高慣性モーメントや軽量モデルが増え、少しずつ様相が変わってきたドライバーの最新事情。「3機種の中でとりあえず真ん中だろうと、スタンダードモデルから試打を行うのは“少し前”の話になってきました」という三田氏。

「フィッティングしていただくお客さんの傾向でも、とりあえず『スタンダード』で試すケースが減り、とりあえず『MAX』から。または、ロフト角も10.5度ではなく、11度以上を先に試してもらう機会が増えました。僕はアスリートなので、私はパワーヒッターなのでと『MAX』はちょっと… と先入観だけで敬遠するのは誤った判断になりつつあります」

テクノロジーの進化により、急速に変化を遂げた最新ドライバー。トレンドに沿ったフィッティングを行い、適切な判断で購入を検討していただきたい。

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